ひゅうまん京都

WEB版 『ひゅうまん京都』

 

 
 
特集「特別支援教育」は障害児教育をどう変えるか
(04年6月号)

松本美津男新会長松本美津男新会長に聞く
障害種別越え、権利拡大・生活向上へ


編集部 新しく会長を務めることになられました。最初に、ご自身の経歴などをお話しください。

呉竹養護学校の一期生

松本 稲継前会長のご健康の関係で、会長を引き受けることになりました。よろしくお願いいたします。
 生まれは51年、京都です。一歳半のときポリオウイルスによる両下肢機能障害となりました。
 現在ではポリオワクチンで予防できるようになっており、「生きた化石」と自分の障害を説明することもあります。
 学校は、一年間の就学猶予の後、新設された京都市立呉竹養護学校に入学しました。言ってみれば呉竹のフルコース第一回卒業生というわけです。
 私のころは中学部までしかなかったので、高校からは普通高校に行き大学に進学しました

障害者運動との出会い

編集部 障害者問題とはどんな出会いでしたか。

松本 はい、障害者運動に関わり始めたのは大学入学後でしたが、大学の入学試験会場の入口で、京障連結成前に開かれた集会の案内ビラを受け取ったことが記憶に残っています。34年前のことです。
 大学時代は全国障害者問題研究会のサークル活動が中心で、障害のある二部学生に誘われて、日本身体障害者友愛会京都支部の行事にも時々参加しました。
 大学卒業後就職してから、友愛会や労働組合の役員もしながら京障連にもかかわるようになりました。
 以後30年近く京障連に関わってきました。過ぎてしまえば早いものです。

編集部 卒業されて京都市役所に就職されたんですね。

松本 そうです。以来、福祉職場で働き、現在は深草福祉事務所で仕事をしています。

強力な情報発信源に

編集部 これまでも、役員として京障連に関わってこられたわけですが、京障連の今とこれからについて、感想を聞かせていただけませんか。

松本 30年を経て、今では月間の機関紙が定期に発行されるようになり、ホームページも開設しました。さらに、月一回とはいえ、FMラジオで独自の情報発信までできるようになりました。力強い情報発信体制だと思います。
 京障連の良いところというか大きな特質は、障害の種別を越えて当事者の組織が加盟しているところにあります。また、障害者問題に関係する団体や個人と幅広く手を組んで運動を進めているところです。
 この点は、これからもわが組織として大切にしていきたいと考えています。

障害児教育、無年金

北総合養護学校をグラウンドから見る(5月15日)。編集部 当面する運動課題については如何ですか。

松本 組織全体で取組む課題は総会方針通りなんです。が、特に私がこだわっていることがあります。
 出身校・呉竹養護学校の生徒がクックチル方式の給食を今春から食べさせられているのは非常に腹立たしい限りです。新設の北養護学校はこの給食問題だけでなく、5階建てでしかも1階が使えないというのですから、障害児の安全を二の次にしていると言われても仕方ないでしょう。
 障害児の教育環境、条件整備に力を入れたいですね。
 実は、国民年金が任意加入であった学生時代の障害で年金未加入を理由に障害年金支給を受けられず、支給を求めて訴訟を起こした原告の一人である坂井一裕さんは、私と同い年なんです。
 20歳以前からの障害者である私は掛け金無しで障害基礎年金の受給権があるのに、20歳を過ぎて障害者になった坂井さんには年金支給がない。それだけでなく、国民年金の保険料免除もありません。
 一般論としてだけでなく同い年の障害者としてもこのようなことは容認できません。勝訴判決を勝ち取るためにがんばりたいですね。

IT社会と障害者

編集部 ご自身との関わりの深い課題についてのこだわりはよく分かりました。その他の課題はどうですか。

松本 世の中はIT社会ですが、パソコンでホームページが見られる障害者はまだ限られています。持っていても、通信料が気になって気軽に使えないとかパソコンが故障しても直しにくいなどといった課題もあります。
 せっかくの先進技術を、生活上最も必要とする障害者が気軽に利用できない現状を改善しなくてはなりません。
 パソコンボランティアが各地で活躍していますが、京都においては絶対的に不足しています。こうした人たちを増やしていくこと、それまでに、完璧でなくとも、マスターした障害者同士でも教え合う取組みも考えたいですね。

肢体障害者の介助

「社会保障予算の充実を」「障害無年金者救済を」と訴える(6月12日、大阪駅前)松本 なんといっても介助保障です。
 それから、私は、大学1回生頃まで、腰から左足つま先近くまでの補装具を装着していました。体力低下もあり松葉杖併用が不可欠になり、結局、重い補装具をやめてしまいました。補装具は学校に入学するために作って使い始めたのですが、なかなかぴったり合うものができなくて、自分で補装具づくりができたらいいのにと真剣に考えたことがあります。
 補装具や自助具はぴったり合えばまさに自立の道具となるわけで、もっと研究開発が進むことを願います。
 また、視覚障害者の方が普通の印刷物が読めるようにできる機器、話し言葉が即時に文字化できる器械の普及開発も課題です。当面、京障連が自前で点字資料づくりができればとも思います。

障害者の移動保障

編集部 なるほど。ところで、松本さんは車を運転されますが、障害者と移動の問題はどうですか。

松本 障害者と自動車の関わりでは、有料道路の割引方式がようやく改善されました。手帳さえ携帯していれば割引証だけで料金割引が受けられるようになったのです。私たちの声が届いたという感があります。
 しかし、ETC利用促進の副産物でもあり、不正防止のため割引証が必要と言ってきた関係機関の理屈は、目的のためには一気に消え去るというご都合主義の典型でもあります。
 改善されたとはいえ、自己所有でない車は割引対象外であるため、車検や故障の時の代車が割引されず、旅行先のレンタカーも割引制度が使えません。
 車が限定されているのは、駐車禁止除外標章についても同様です。これらの問題も本来の趣旨からすれば改善策はあるはずです。
 ところで、先日乗った琵琶湖の遊覧船には前にはなかったエレベーターが設置されていました。後付のせいか、やや陳腐なものではありましたが一歩前進です。
 これは住宅問題というべきかも知れませんが、エレベーターのない公営住宅の2階に住む肢体障害の仲間は、自治会や関係団体と共にねばり強く設置運動を進め、最近ついにエレベーター設置を実現しした。これは嬉しい出来事でした。もっともっと広げたいことです。

編集部 多くの新しい課題があることがよく分かりました。国際的にも国内的にも障害者にかかわる状況は大きく動いています。
 最後にまとめて、一般的な課題についてお話しいただけませんか。

障害者のねがい握り

松本 そうですね。さしあたって4点について、やや一般的な課題を列挙します。

 第1が、障害者の生活と権利の守り手となる自治体づくりです。

 第2は、個々の障害者の声が生かせる運動をすすめることです。

 第3は、障害者に関連する制度などの変更の際には事前に説明を受け、協議できる仕組みをつくることです。

 そして、第4が全国的な連帯の力で、世界と国内の障害者施策の改悪を阻止し、改善を進めていくことです。
 私、思うんですが、青年のころは、歩道の段差がじゃまでも、それを削ってもらえるなどとは全く思い及びませんでした。
 しかし今では、車イスにとって障壁になる歩道の段差解消はあたりまえという社会的合意がほぼ確立しました。少し大げさに言えば、夢にも思わなかったことが現実になる時代です。
 福祉関連の制度見直し、負担強化・予算削減の波にはすさまじいものがありますが、夢と展望をを失わず、ねばり強く幅広い運動を進めたいと思います。
 みなさんのご支援ご協力を重ねてよろしくお願いします。

(聞き手・編集部) 


 
 


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