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☆2019/10/5更新☆
【読書雑記574】『上京する文學 漱石から春樹まで』(岡崎武志、ちくま文庫、840円+税)。本書は、東京に強い関心を抱き、実際にも上京し、そこで作品を書いた作家の思いをたどった興味深い読み物。僕自身が30歳代前半の7年間、東京暮らし(京都から上京して、都内の出版社に勤務した)を経験したが、その時の思いが重なった。
扱われるのは、斎藤茂吉(山形)、山本有三(栃木)、石川啄木(岩手)、夏目漱石(小説「三四郎」の主人公の上京について書いている)、山本周五郎(山梨)、菊池寛(香川)、室生犀星(石川)、江戸川乱歩(三重)、宮沢賢治(岩手)、川端康成(大阪)、林芙美子(山口)、太宰治(青森)、向田邦子(東京生まれではあるが、それ以外の土地を、転勤族の父親の関係で転々とした)、五木寛之(福岡)、井上ひさし(山形)、松本清張(福岡)、寺山修司(青森)、村上春樹(京都)の18人。
彼らが、(当時)いかに東京に憧れ、そこで暮らすことを夢見たか。彼らは東京の何に興味をもち、驚いたのか、それがわかる。茂吉は駅のまばゆさに驚いた(故郷の夜は漆黒の闇)。啄木は停車場、新聞社などの都会の装置に驚き、菊池寛は大きな図書館に眼を奪われた。
彼らの憧れと志の先にあったのは、近代の文化装置、銀座の匂い、妙なよそよそしさとその対極にある自由、ある種のいかがわしさ、シュールであるが退廃的でもある時代の空気だったのではないか。日本の近代文学の黎明期に、東京に憧れた文学者が果たした役割は大きく、彼らの作品は骨太だった。18人の作家と、それぞれの作品を、「地方から上京」という切り口で、分析しているのがおもしろい。
Smart Renewal History by The Room
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