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☆2019/10/18更新☆
【読書雑記579】『大江健三郎とその時代 「戦後」に選ばれた小説家』(山本昭宏、人文書院、3500円+税)。大江の代表的な作品を時代と人との関係で読みといた意欲作、とはいえ「九条の会」への大江の意気込み、期待と言ったことにも触れてほしかったとは、無いものねだりか。評伝として、楽しく読んだ。
「文学と時代の相克」かみ砕いていえば、生誕から現在まで、戦後文学の頂点を極めた作家の全貌に迫った作品とも言えようか。
愛媛の山深い地に生を受け、上京後、東大生作家としてデビュー、23歳で芥川賞を受賞、1994年にはノーベル文学賞受賞したという輝かしい経歴を持つ彼は、「時代の寵児」となった。大江は、核兵器や憲法九条などの問題についても社会的発言を続けた知識人だった。
著者は、<大江健三郎の文学と発言とを辿りながら、戦後日本社会を論じていくが、大江に注目するのは、単に彼が「有名人」だからではない。そうではなくて、大江自身が、近代日本をめぐる思想史的関心を持続させてきたからこそ、彼を軸にすることができるのだ。より具体的に述べると、「共同体」と「超越性」という二つの概念を意識しながら、大江の試みを戦後史のなかに置き直していく。その上で、大江健三郎を主人公にして戦後日本社会の諸問題や論点とその変化を記述したい」と書く。
『ヒロシマ・ノート』(岩波新書、1965年)『沖縄ノート』(岩波新書、1970年』の2つの評論は忘れがたい。とりわけ前著は、19歳の僕の広島初体験の「同行者」であり、広島単独行の「導き手」であり、広島から帰ってからのアルバイトで得た賃金を広島の原爆病院に送り付けた「原因」ともなった書でもあった。
Smart Renewal History by The Room
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