編集長の毒吐録
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☆2019/12/20更新☆

【読書雑記597】『手仕事の帝国日本 民芸・手芸・農民美術の時 シリーズ日本の中の世界史』(池田忍、岩波書店、2500円+税)。日清・日露、第一次世界大戦を経験する中で、富本憲吉、藤井達吉、山本鼎らの若き美術家たちによって再発見された「日本美術」だが、それは、西洋近代との出会いの中で急速に制度化されたと著者は言う。

その過程で一度は失われた手仕事の魅力と価値を若き美術家たちが見つけた。新しい「美」の創造をめざした思索と実践の軌跡の歴史的意義を問い直した労作。

絵画や彫刻のような純粋美術でもなく、日用品、手芸品、民芸品、工芸品など高価なものでない分野の製品、それらは普段使いの品だが、これらが殖産興業政策の中での重要な輸出品として奨励される事情などから、著者の筆はすすむ。産業革命が始まったばかりの日本においては、輸出競争力のある工業製品が不足し即戦力と期待された。

欧州では、異境の分化や芸術についての感心が高まっていた。欧州の文化的・思想的雰囲気と響き合う中で、日本の芸術家や知識人の間に、「手仕事品」の作り手である農村の女性の生活の中に、芸術的な価値を織り込んで行くかなどの多様な活動が生まれた。

著者は、それらの動きを丹念に追う。明治維新後の「脱亜入欧」の下、制度や規範を求める先が欧州に変わると、造形に関わる領域でも用語や制度の再定義が進み、「美術」「絵画」「彫刻」という新しい訳語や概念が作られた。美術と工芸を分け、美術が上位で工芸が下位という区分が生じたのもこの時期だという。

絵画や彫刻のような純粋美術でもなく、日用品、手芸品、民芸品、工芸品など高価なものでない分野の製品、それらは普段使いの品だが、これらが殖産興業政策の中での重要な輸出品として奨励される事情などから、著者の筆はすすむ。産業革命が始まったばかりの日本においては、輸出競争力のある工業製品が不足し即戦力と期待された。

欧州では、異境の分化や芸術についての感心が高まっていた。欧州の文化的・思想的雰囲気と響き合う中で、日本の芸術家や知識人の間に、「手仕事品」の作り手である農村の女性の生活の中に、芸術的な価値を織り込んで行くかなどの多様な活動が生まれた。

著者は、それらの動きを丹念に追う。明治維新後の「脱亜入欧」の下、制度や規範を求める先が欧州に変わると、造形に関わる領域でも用語や制度の再定義が進み、「美術」「絵画」「彫刻」という新しい訳語や概念が作られた。

美術と工芸を分け、美術が上位で工芸が下位という区分が生じたのもこの時期だという。劣位に置かれた工芸の、新しい意味や価値を模索した富本憲吉、さらにその枠外にあった、女性の「手芸」に光を当てた藤井達吉、農民の「手仕事」を称揚した山本鼎らの美術運動は、権威化する美術を、日々の生活が営まれる場へ引き戻し、解放していくものと見なされた。

劣位に置かれた工芸の、新しい意味や価値を模索した富本憲吉、さらにその枠外にあった、女性の「手芸」に光を当てた藤井達吉、農民の「手仕事」を称揚した山本鼎らの美術運動は、権威化する美術を、日々の生活が営まれる場へ引き戻し、解放していくものと見なされた。

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