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☆2019/12/25更新☆
【読書雑記598】『買春する帝国 日本軍「慰安婦」問題の基底 シリーズ日本の中の世界史❼』(吉見義明、岩波書店、2400円+税)。明治政府が違法化した人身売買。それに支えられた近代日本の公娼制が、帝国の拡大につれ変化し、ついには日本軍「慰安婦」制度を生み出すまでの歴史をたどった好著。性売買に関する世界的傾向がどのようなものであったのか、日本のシステムがどのようにしてつくり出されたのかを追う。
本書は、幕末から売春防止法までの、日本の公娼制度の歴史を、公的資料に基づく数値データや公的文書で綴る。本書名の『買春する帝国』の「帝国」とは、その日本の公娼制度を原型とする管理売春モデルが、大日本帝国とともに、東アジア・東南アジアに拡大した歴史をさす。
「からゆきさん」、つまり淫売婦が海外に存在するのは「国辱」だとして、日本政府も取り締まり始めたが、それは体面をつくろうためのものに過ぎず、従軍慰安婦につながった。従軍慰安婦の出身国は、日本・朝鮮半島・台湾・中国を中心に多岐にわたるが、前借金による娼妓契約、多くの場合一定の人身的拘束を伴う「人身売買」をベースにしている以上、性奴隷としての違法性は免れない。
当時、日本では売春は合法であったので、従軍慰安婦は違法な制度ではないという主張があるが、それは根拠を持たない。朝鮮人従軍慰安婦は日本の公娼制度の延長にあるので、「職業」であるわけではなく、また、単なる日本軍の朝鮮人弾圧であるわけでもない。本書を読むと、日本の公娼制度の中で生まれた、軍・警察が関与した公娼であったことが理解できる。
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