編集長の毒吐録
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☆2019/12/27更新☆

【読書雑記599】『「黒い羽根」の戦後史』 (藤野豊、六花出版、2800円+税)。日本の復興のための基幹産業と位置づけられた炭鉱産業だが、 すでに戦中の1940年代末には合理化政策が進められていた。その後、多くの炭鉱労働者が、「合理化政策」と「エネルギー革命」で失業し、 炭鉱地帯は貧困と人身売買の温床になった。本書は、「炭鉱離職者臨時措置法」が成立するまでの15年間を踏まえ、炭鉱労働者を犠牲にして進められた、戦後日本の高度経済を追う。

50年代半ば、炭鉱合理化政策に石油や石炭などの輸入が加わり、石炭産業は「不況」のどん底に突き落された。中小炭鉱が多かった筑豊では、廃山による失業者が続出するなど影響は深刻だった。生活苦を原因とする困窮で不就学児童が急増し、少女の身売りまでが横行したという。

「黒い羽根」運動は赤い羽根運動に範をとり、筑豊の炭鉱失業者家庭を救う目的で59年9月からはじまった募金活動をいう。安本末子の『にあんちゃん』や土門拳の『筑豊のこどもたち』が注目されたのもその頃だった。炭鉱労働者の苦境に世間は大きな関心と同情を寄せた。

著者は、<わたくしは、三池争議に示されたような、社会主義革命を目指す闘いとは異なる、別の形の炭鉱の失業問題との闘いの可能性を模索していった。そして、その過程で、半ば労働運動史のなかで「神話化」された三池争議への疑問を強く懐くようになった>と書いている。

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