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☆2019/12/28更新☆
【読書雑記600】『天皇はいかに受け継がれたか 天皇の身体と皇位継承』(加藤陽子/編著、 歴史学研究会/編集、績文堂出版、2800円+税)。本書は、2018年4月に開催された歴史学研究会総合部会例会シンポジウムの記録。19年5月の明仁天皇の譲位(退位)は、終身在位を想定してきた新旧の皇室典範の制度によらない、新たな皇位継承の事例の幕開けとなる。明治以来の天皇とは違う代替わりがなされる時代に、僕らは生きている。
今回の天皇の譲位は、生身の身体を持つ天皇と、「皇位」という位置づけを持つ天皇というものが、近代になって以来初めて一体のものではなくなる瞬間が訪れたということだろう。大きな変化といえよう。
歴史上、天皇はどのように位置づけられ、継承の手順はどのように変化してきたのか。また天皇自身は、政治や社会の変化にいかに対応しようとしたのか。この問題を、各時代・各領域の第一人者による論文・コラムによって通史的にとらえ、さらに、アジアの君主制、ヨーロッパの王政の比較から迫ったものが本書だ。
世襲王政の一つの形式として位置づけられる日本の天皇制は、例えば中国の漢代・唐代の皇帝制度とは大きく異なっている。また、世襲と選挙という二つの王政の原理を持つヨーロッパから見た場合、日本および日本人が天皇に対して抱いている歴史認識は、あまりにも世襲を前提とした認識に見えるようだ。歴史を縦と横から見ることで、歴史における天皇の位置づけが初めて明らかにできるのではないか。
Smart Renewal History by The Room
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