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☆2020/2/21更新☆
【読書雑記613】『過客問答』 (加藤周一、かもがわ出版、2800円+税) 。本書のタイトルは、≪月日は百代の過客にして往きかふ年もまた旅人なり≫(『奥の細道』序文)から採られたものだろう。著者は、聞き手の江藤文夫(評論家)に応えて、なぜその国に行ったのか、どこの大学でどんな学生に教えたのか、どんな芝居・音楽・映画を見たのか、あるいは戦時中、東大前の白十字で誰にどんな話をしたのかを語る。
加藤周一を良くは知らない人は、彼の博識振りとその見識の鋭さに驚くだろうし、良く知っている人は彼の論文の背景を知り、彼の日常生活に触れることができるだろう。
注目されるのは、21世紀への彼の警告と提言である。「この10年来芽生えてきた日本のナショナリズムの問題」「統一ヨーロッパ、強大なアメリカに対!抗するには日・韓・中の連帯しかない。」「日本の共同体意識の伝統に変わるべき倫理的価値体系の問題」・・。
≪聞き終えて≫で江藤文夫(評論家)は言う。<加藤さんの“冷戦的思考”という言葉に惹かれます。一つの体制が長期にわたると、それに慣れた“思考”が生まれる。時には、体質の一部を形づくる。そのことの怖さを、私は十五年戦争下の日常のなかで経験しました。時代を、自身の日常
を<開いてゆく>ための思考の大事さを、いま思っています。 加藤さんの“旅”のお話―それは世界への旅、時代の旅であるとともに、加藤さんご自身の人生の旅でもありますが―は、たえず私自身の思考をかき立ててくれるものでした。計50時間にも及ぶ、多岐にわたるお話が、私にとってつねに快いものであったのは、何よりそのためだったと思います。 読者のかたがたにとって、この本が、同じ思いを抱かせるものであることを、そしてここから、多様な、また多元的な”現代”観が生まれることを、切に願っております>。
Smart Renewal History by The Room
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