|
<<前のページ
☆2020/2/27更新☆
「芸術とは、情熱の別名だ」。井上ひさしは、『初日への手紙 「東京裁判三部作」のできるまで』に収録されている「夢の裂け目」を書いた時、この言葉を創りました(ちなみに、「東京裁判三部作」とは「夢の裂け目」「夢の泪」「夢の痂)」の3作)。この本は、作家が、プロデューサー古川恒一(この本の編者でもある)にあてた手紙で構成されています。
初めは、「完璧な確信」とか「こちらのもの」と自信に満ちていますが、初日が近づくにつれ、次第に変わります。「遅筆堂」の井上は仕上がりが遅く、「夢の痂」では完成は初日の3日前です。切羽詰った作家の手紙には、「非力」や「天下一の極悪人」という言葉が並びます。『初日への手紙』は、作家が「東京裁判三部作」を完成する苦闘を描きます。もうひとつの「東京裁判三部作」言えるでしょう。
『初日への手紙U『紙屋町さくらホテル』『箱根強羅ホテル』のできるまで』。本書は「紙屋町さくらホテル」と「箱根強羅ホテル」の戯曲ができるまでの、作家の膨大な私信やメモを収録したものですが、「紙屋町さくらホテル」では長谷川清が天皇の密使として登場します。長谷川と天皇の関係を柱に、戦争末期の緊迫した場面を再現しようとする著者の構想力が、肉筆のメモを交えつつ読者に迫ります。
その背景には、もし天皇の決断がもっと早ければどれだけの人々を救うことができたかという著者の強いこだわりがあります。作家は天皇の戦争責任を鋭く問います。もし作家が生き返って「昭和天皇実録」を読めば、構想が裏付けられたと感じたことでしょう。
■井上ひさし没後10年 講演と映画でのぞく「ひさしワールド」■4月12日(日)13:30〜17:15■響都ホール(京都駅八条口南)■参加自由・無料・手話通訳■講演:小森陽一さん(東大名誉教授、九条の会事務局長)*演題「井上ひさしと憲法九条―没後10年にあたって―」■映画:『父と暮せば』(井上ひさし/原作、出演/宮沢りえ)
Smart Renewal History by The Room
|