|
<<前のページ
☆2020/4/3更新☆
【読書雑記625】『本を読む。松山巖書評集』(松山巖、西田書店、4600円+税)。厚さが51mm、重さが1120g!!本書には、33年間にわたり書き続けられた著者の書評が収められている。取り上げられた作品は541冊。松山の書評の第1の特徴は、持って回った文章ではないこと。読みやすい。第2は、引用は最小限に止めていること、第3は、作品の著者の心に潜むものに肉薄している。
森洋子の『ブリューゲルの「子供の遊戯」』を、このように評する。「ブリューゲルの『子供の遊戯』(1560年)という作品の分析を通して、中世から近世における子供の存在を確認しようとする。総数246人の子供(男168人、女78人)が描かれているといわれるこの絵には、91の遊びが数えられる。・・・このように精力的に子供の遊びを題材とするひとりの画家を知るだけでも、当時の『子供の存在』が十分に認識されてくる」。
杉浦日向子の『東京イワシ頭』はこう結ばれる。「漫画家杉浦日向子は怪談噺をよく描く。人間の奥深い闇こそ、じつは抜けるような青空を求める気持ちに通じていることを知っているからである」。
著者の書評デビューは『カメラ毎日』で、写真集が対象だった(第一作は濱谷浩『學藝諸家』)。建築家でもある著者の、初期の新聞書評には建築・写真・都市論・芸術論が多いが、川村二郎の急死を受け、読売新聞読書委員に復帰してからの書評には、文学が目立つ。「歴史の波間で忘れかけた事象を見つめ直す作家」(津島佑子の『ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語』『狩りの時代』など)、井上ひさしの遺作『一週間』にその達成を見て、「未来へのメッセージ」を託されたという発言などが心を打つ。
Smart Renewal History by The Room
|