編集長の毒吐録
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☆2020/4/24更新☆

【読書雑記631】『アニメーション、折りにふれて』(高畑勲、岩波現代文庫、900円+税)。高畑監督の「教養」と人間像にふれることが出来るエッセイ集。著者は共同作業の仲間たちとともに映画を作ってきたが、本書ではスタジオジブリの内と外も描かれる。

高畑勲の著作には、これまで『映画を作りながら考えたこと』、『映画を作りながら考えたこと2』があるが、本書は3冊目。これまでのものを上巻、中巻とするなら、本書はその下巻にあたるだろう。

高畑は言う。「寄り添い型の演出」は、例えば主人公がこれから落とし穴に落ちるというときに、主人公(観客も)は落とし穴があることを知らず、穴に落ちた瞬間に、両者がいっしょに驚くという演出法である。

この演出では、主人公への感情移入や共感を促し、観客もドキドキしながら観ることになる。アトラクション的であり、ハリウッド的であり、宮崎駿的であって、これでは駄目だと・・。「見守り型の演出」では、主人公はそこに落とし穴があることを知らないが、観客は知っている。これは、遠くからハラハラしながら見守ることになる。

前者では、観客の感情がジェットコースターのように翻弄され、人間的な成長など望めない。見守り型では、観客は思考し、判断し、想像する余地がある。知的であり、観終わったあとには人間的な成長が期待でき、実生活への応用も効く。高畑は映画を通じて観客を啓蒙し教育しようとしていたのではないか。

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