編集長の毒吐録
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☆2020/9/1更新☆

【読書雑記667】『感染症と文明―共生への道』 (山本太郎、岩波書店、720円+税)。著者はアフリカという感染症の「るつぼ」で研究に従事していた経験があるという人、それゆえか、彼の文明観は深く、説得力に富む。感染症を歴史的に理解するうえで必読の書。彼は「感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない」と言う。耳を傾けたい。

「病原菌の根絶は、もしかすると、行きすぎた「適応」」と著者は言う。あるウィルスを根絶すれば新たなウィルスが猛威を振るうことになり、ワクチンや免疫を作れば、その免疫や抗生物質が効かないウィルスや菌を生み出してしまうことが多い。つまりいたちごっこが続く。

「戦争」の相手は「人間」だが、これに加えて「感染症」や「災害」も「相手」になる。「人間の抱く一切の企図が、遅かれ早かれ人間自身に刃を向けることになる以上は、理想的な社会形態をを追及してもむだなことだ」と言うが。「現在(いま)を生きることに思い上がっていないだろうか」と著者は現代人に訴える。これは医師として感染症の患者に何人も立ち会った著者だからこそ言える言葉だ。本書は古代から現代まで、感染症の歴史を概説した書だが、各所に貴重で耳を傾けるべき言が散りばめられている。

「人類と感染症の関係において転換点となったのは、農耕の開始、定住、野生動物の家畜化であった」「感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためには、『共生』の考え方が必要になる」。

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