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☆2020/9/4更新☆
【読書雑記668】『「勤労青年」の教養文化史』 (福間良明、岩波書店、900円+税)。1950,60年代、少なくない青年が、「知的なもの」への憧れを抱いた。僕もその一員であったという年代的共通もあって、「共感的読書」が楽しめた。主にここで記述されている青年とは、「学びの環境」が違ったが、「知的なもの」へのこだわりは共通していた。また、何人もの知り合いの姿を重ね合わせて、読み進められた。
大学はおろか高校にも進めなかった青年たちは、「読書や勉学を通じて真実を模索し、人格を磨かなければならない」と考えていたと著者言うが、共感できる指摘だった。そのような価値観が、なぜ広く共有されたのか。いつ頃、なぜ消えさってしまたったのか。地域差やメディアも考慮に入れ、考察する。労作、好著。
1945年以降の全日制高校への進学を、主に経済的理由で断念せざるを得なかった人達が少なくなかった時代の話だ。青年団や青年学級で勉強を続ける。都会へ働きに出た人達は、日々の仕事を終えた後に定時制高校へ通う。このような学校に通わずに、『人生手帖』や『葦』と言うような人生雑誌の記事と古今東西の名著を読んで、進学者に負けない教養を身につける。以上のような3パターンごとに詳述される。
著者は、当事者の残した手記や新聞・雑誌の記事、聞き取り、自治体の記録などの資料を丁寧に辿ってその姿を明らかにして行く。この中で公的な資格として認められるのは、定時制高校の卒業証書だけだが、多くの企業は、定時制高校の卒業生を高卒採用の有資格者とは認めなかった。青年団や青年学級、人生雑誌購読者の独学など、実利は全くない。その背景を著者は丹念に解明して行く。
Smart Renewal History by The Room
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