編集長の毒吐録
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☆2020/9/11更新☆

『帝銀事件と日本の秘密戦』(山田朗、新日本出版社)の書評を受けて(4回連載。❸)。日本軍は、中国で毒ガス戦も実行した。731部隊では、毒ガスの人体実験も行なった。ガラス張りの実験室に「マルタ」を入れ、毒ガスで死亡していく経過を記録していった。731部隊の現地を見て、思ったことがある。「戦争犯罪」では片づけることができない、残虐性があるということであり、「エリート科学者」が、戦争への加担とともに、「功名心」に捉われていたということだ。

想像するに、「エリート科学者」は人間を「捕虜」なるがゆえに、「実験材料」としてしか考えていなかったのではないか。京都大学出身者の「悪魔の所業」を見るにつけて、「エリート科学者」を生みだした構造を考えざるを得なかった。731部隊の跡地を見れば見るほどに、無口になる自分があった。

そんな思いも抱いて、「悪魔の飽食」の舞台にたった。歌詞は中国語に訳してある。200人を超える合唱団員、犠牲となるマルタ・・。僕に、ストップウォッチ片手の死刑執行人の役が回ってきた。僕以外の人々と違って、僕だけが“加害の側の人間”を演じる。「上手く」演じれば演じるほど、憎しみは舞台の上の僕に向かう。

「悪魔の飽食」第5章“三十七年目の通夜”は次のような歌詞で始まり、ナレーションがある。♪私はストップウォッチを握った/ガラス張りのチャンバーの中/ロシア人母と子のマルタ//ここで生まれ ここで育った/女の子は4歳 栗色の髪/母マルタの胸に 顔を埋めていた//

♪顔を上げる子供マルタ/そのあどけない瞳♪/(ナレーション)/ガス注入/最終秒読み開始/5、4、3、2、1、ガス注入!//♪私はストップウォッチを押した/我が子を我が胸に抱き寄せる/ロシア人母のマルタ//その時吹き出した青酸ガス/母は子をかばう 吹きかかるガス/母マルタは からだを盾にした・・♪。観客の刺すような目つきが忘れられない。(❸終わり。続く)

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