|
<<前のページ
☆2020/9/18更新☆
『読書雑記670』『少女だった私に起きた、電車のなかでのすべてについて』 (佐々木くみ・ エマニュエル・アルノー、イースト・プレス、1600円+税)。12歳の中学生のくみが電車の中で痴漢被害にあった。「誰も助けてくれない。これが今、12歳の女子中学生である私の生活。痴漢と対峙するのは、いつもひとりだ」。山手線で毎日のように繰り返された痴漢行為。止まらない暴力、周囲の大人の無理解が、12歳の少女の絶望を加速する。痴漢被害者による実体験を基にした私小説だ。
この作品は、最初フランスで刊行され議論になったが、それが邦訳された。この被害は、「よくあること」でも「大げさ」でもない。私たちの日常に潜むグロテスクな事実から目を背けないために、被害者が語る絶望と怒りに耳を傾けたい。
真面目に学校に通っているだけの子ども(中学生、高校生)が、“普通のサラリーマン”に毎日のように体を弄られ、次第に自尊心を失い、恋や愛への憧れを失い、自分をただの新鮮な肉の塊のように思わされ、自殺を試みる。そこまで追い込む現実。少しずつなぶり殺されていくような様子がよく分かって、読むのが辛い。フランスの読者に向けて、信じられるだろうか?と何度も呼びかける文章に驚かされた。日本で暮らしていると「当たり前」のことだ、痴漢に遭うことはよくあることだ、なんでもないことだ、そんな価値観がある日本こそ恥ずかしい。そんな読後観、痴漢行為は犯罪だ。
Smart Renewal History by The Room
|