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☆2020/9/29更新☆
【読書雑記673】『薔薇雨 1960年6月』 (手塚英男、同時代社、1500円+税)。著者は1960年代の東大生、田舎から東京に出てきた。学生寮でのたたかいなど、学生生活と学生運動を描く。ほぼ同時代(当時、僕は中学校の3年生だった)を送った僕は、自分の経験あるいは体験を下敷きにして面白く読んだ。
その夜、1965年6月19日、国会南通用門には群衆が押し寄せた。著者もその中に加わった。そうした中で、東大生の樺美智子は斃れた。機動隊に殺されたという有力な意見もある。〈わたしの樺美智子を捜す旅は、『薔薇雨』の中で「彼女」に出会い、ようやく確かな輪郭を得て、『樺美智子 聖少女伝説』を書き上げることができた〉(江刺昭子)。著者の「青春の記」であり、この時代に向き合った一学生の人生の断面記録。
本書は、60年安保闘争とその時代の雰囲気を思い起こさせてくれる。著者は後書きで述べているのだが、60年の総理大臣・岸信介の孫、安倍晋三首相が安全保障関連法案を強行したというのも歴史の皮肉だろうか。<一九六〇年六月一五日、ついに雨のそぼ降るあの夜を迎えました。国会南通用門前の夜半の激突のなかで、二二歳の「彼女」は機動隊に踏みにじられ、惨死しました。 あなたには長い人生があるわ。/ でもわたしには、もう明日はないの。 闇の中に間違いなく「彼女」の悲鳴を聞きました。その悲鳴は絶えず背に張りついて離れませんでした>(「あとがき」)
Smart Renewal History by The Room
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