編集長の毒吐録
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☆2020/10/16更新☆

【読書雑記678】『啄木断章』(碓田のぼる、本の泉社、1300円+税)。<明けむ日の勝算胸にさだまりて、のぼる悠々馬首をめぐらすや、 莞爾たる老将軍の帽の上に悲雁一連月に啼く>。石川啄木の短文を著者は「老将軍はいまや無名の典型となって、馬首をめぐらし、ナショナリズムを越境してグローバルな世界(のちの社会主義的思想)へ旅立とうとする」読む。啄木は世の中の動きにも目を凝らした。

はじめに/一、啄木詩「老将軍」発見の経過/二、啄木詩「老将軍」と「マカロフ提督追悼の詩」/三、仮説の探求/四、「曹洞宗制」と啄木伝記とのかかわり/五、啄木詩「老将軍」の一視点─越境する啄木のナショナリズム─/エピローグ

90歳を超える著者の「啄木愛」に脱帽!啄木研究へのあくなき情熱を持ち続ける著者に敬意、本書もその成果のひとつだろう。著者は歌人でもあるが、その著書から伝わってくるのは、不条理な社会を黙認してはならない、という静かな怒りだが、氏はこの著でも啄木の言葉を通して社会の矛盾を追及している。冒頭にある「啄木詩「老将軍」考―越境するナショナリズム」では、啄木詩の原点を見つめているのが印象的、著者の研究の視点と言えようか。「曹洞宗」という宗教面からの視点での「啄木伝記」の見直しも指摘している。

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