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☆2020/10/20更新☆
【読書雑記679】『シリア獄中獄外』 (ヤシーン・ハージュ・サーレハ/著・ 岡崎弘樹/訳、みすず書房、3600円+税)。シリアに、半世紀にわたって君臨するアサド。国際情勢にも支えられた独裁国家で、監獄は「国民的経験」になろうとしているという。ハーフェズ政権下の1980年、反体制派組織に所属してとして拘束され、16年もの長期間獄中につながれたアレッポ大学医学部生・・。その人物が本書の著者。彼は、今世紀に入って「ハヤート」「ナハ―ル」などの汎アラブ紙上で論陣を張り、「アラブの春」以後はその発言が世界的に注目されるでもあるようになった作家でありジャーナリストでもある人の監獄経験、出獄後の元政治囚の生活、獄外情勢について書いた。
第1章 年月と場所の面持ち/第2章 パルミラへの道/第3章 監獄の生活と時間/第4章 シリアの元政治囚の世界/第5章 監獄への郷愁/第6章 ブルジョワ化した左派勢力の元政治囚/第7章 知識人の監獄でなく〈監獄の知識人〉/第8章 監獄で私は解放され、革命を経験した/第9章 収監と監獄への馴化/第10章 忘却の地、シリア/第11章 政治としてのパルミラ アサド帝国の秘密工場
シリア問題は、僕にとって、厄介なテーマだ。ナショナリズムであれ、社会主義であれ、民主主義であれ、20世紀の政治思想を形成してきた主要な言説に対応していないからだ。2011年春の革命以前、シリア国民が半世紀にわたって政治的に沈没していたように、この国の分析が沈没している原因はここにある。しかし考えてみれば、実際これは、他の諸国あるいはすべての国に共通した状況であるかのように思えてくる。「難解」な書ではあるが、書も難解だが、かの国を良くは知らないことから来る「難解」だろう。
Smart Renewal History by The Room
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