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☆2020/10/23更新☆
【読書雑記680】『殺す親 殺させられる親―重い障害のある人の親の立場で考える尊厳死・意思決定・地域移行』(児玉真美、生活書院、2300円+税)。「生きるに値しない命」はないという「信念」を持つ著者は、障害を持つ子どもの親でもあり、以前は障害児学校で仕事をした経験を持つ人でもある。
著者は、「私がリンゴの木を植えても植えなくても世界は明日滅びるだろう」という明確な認識を持ち、自分自身が今日を生きるためにリンゴの木を植える。絶望と覚悟が交叉するなかで、出会い、耳を傾け合い、認め合い、繋がり合うことを重視する。著者は抗うすべと希望を探る。
日本型インフォームドコンセントの現状や医療費の増加が問題になっているなかで、議論が進む。障害者運動や地域移行の項では、「施設に入れることそのものの是非」が議論になっている現状を紹介し、地域移行が地域との関わりが増えるのは良いのだろうと感じている人が少なくないという。しかしながら、その裏には社会保障の財源や人手不足の問題もあることを著者は強調する。一方で、知識やノウハウが集積する場所としての重症児者の施設の存在があり、「地域資源」という観点から見ると、強みを活かすことが大切であることもわかる。ところどころで、著者の人間観や人生観が綴られる。今の日本に必要なのは「希望」ではないか。
相模原障害者施設やまゆり園の殺傷事件の後、命の価値をめぐってさまざま意見が飛びかった。社会ではなく、家族に負担を背負わせ、個々の事例として親子の問題に収斂させた結果、「殺させる社会」を作った。親が子の命を管理することに寛容になり、やがて「殺させられる者」に追い詰められていく。「親の願いは、突き詰めれば一つだ。苦しめたくない」。個々の意思が軽視される社会の中で、希望を見つけだす。
Smart Renewal History by The Room
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