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☆2020/10/31更新☆
【読書雑記683】『終わりなき<いくさ> 沖縄戦を心に刻む』(藤原健、琉球新報社、2000円+税)。著者は聞き、それを記録する。「聴いてくれてありがとう、何か少し楽になったような気がするさぁ」。著者は言う。<風の音に乗せて、その声が響いてくるようだった。体験を受け継いで記憶を絶やさないこと、そのためにできること・・>。
著者は毎日新聞大阪本社社会部部長、同編集局長を歴任し、その後(2016年)に自分の「課題」に向き合おうと沖縄に居を移した。また琉球新報客員編集委員としてコラム「おきなわ巡考記」を執筆した。本書ではそのコラムを核に置き、著者がこの間に足でとらえた沖縄をテーマごとに3章に分類し考察する。
書名が示すように「集団自決(強制集団死)」や「艦砲ぬ喰(く)ぇー残(ぬく)さー」のように生き残った人びと、離島苦、27年間の米軍政府統治下の苦闘、今なお続く基地問題の重圧などをルポする。沖縄はいまだ「戦後」を迎えていない。終わりなき戦場(いくさば)であることが伝わる。著者は現場で当事者の声に真摯(しんし)に耳を傾けながら、この体験を何のためにどう継承するのかを問い続ける。好著。「これまで―記憶の断面」では、具体的な例をあげて戦争の記憶を継承する人びとが紹介される。
ハルさんは、顔に残る傷や根元から失われた左手の二本の指など凄絶な戦争の跡が身体に刻まれているが、その体験を臨床心理士に出会うまでは、誰にも話さず生きてきた。心から信頼する人に語り終えた翌年、息を引き取った。続く「これから―抗い、つながり、歩く…」では、高江、辺野古での「国家暴力」に対し、諦めない抵抗の根幹にある沖縄戦の記憶があり、その現場を、病に倒れながらも著者は幾度も歩き、覆い隠される暴力を五感で捉える。
Smart Renewal History by The Room
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