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☆2020/11/17更新☆
【読書雑記688】『ふかいことをおもしろく 創作の原点』(井上ひさし、PHP、1100円+税)。NHKが放映したものを(「100年インタビュー」)を本にしたもの、ひさし没後1年(2011年)に上梓された。5歳で父と死別、児童養護施設に預けられ、施設から高校に通学、上智大学に進学したが、東北なまりの悩みから吃音になり、釜石で働いていた母の元へ帰った。釜石には母がいて、劇場もあって居心地がよかったとひさしは懐かしく振りかえる。
たくましく働く母のつてで、図書館でアルバイトしたことがきっかけで再び上京。浅草の劇場のコントを書いたり、ドラマの脚本の懸賞で稼いで大学の寮費をまかなった。その後、小説・戯曲で活躍し、84年に劇団「こまつ座」を旗揚げ、創作の原点と若い世代に伝えたいことを語る。
著者は自らのおいたち、演劇への目覚めを語る。タイトルに相応しく、「ふかいことをおもしろく、しかも判りやすく」説明していて面白く読めた。
生い立ち、父のこと、母のこと、文学との出会い、懸賞応募から劇作家の道に入っていった経緯、そして笑いとは何か、文学とは何かについての井上流哲学が示される。数々の名作を世に問い、評価をうけ、無数の蔵書という人なので、語る一語一語に重みがある。そして、ひさしのいいところはそれを難しい言葉でなく、わかりやすい言葉で説明するところだ。本書では大きな文字で示される。<情報をどんどん入れて知識になり、知識を集めて知恵をつくっていく、どんな仕事もきっと同じはず><頑張ればひかりが見えてくる><初日の幕が開いて、お客さんが拍手して「いい芝居でした」「感動しました」「笑いました」と言ってくれるのが何よりの報酬>
<笑いとは、人間が作るしかないもの、それは、一人ではできない、人と関わって、お互いに共有しないと意味がないものである><明日命が終わるにしても、今日やることはある><自分が使いこなせる言葉でものを考えることが大切><「それ、わかりませんので教えてください」と無知のふりをして聞き返せばいい。やっぱり無知が一番賢いのです><手が記憶する。記憶した手で新しいことを作っていく>と著者は言う。
Smart Renewal History by The Room
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