編集長の毒吐録
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☆2020/12/17更新☆

【読書雑記696】『兵士たちの戦場 体験と記憶の歴史化』(山田朗、岩波書店、2800円+税)。著者はアジア・太平洋戦争を俎上にのせ、「鎮言」し、「悔悟」と「繰り返さない」の思いで本書をものにした。好著。

あの戦争から生還した兵士の多くは鬼籍に入った。彼らが体験し、記憶として伝えようとした戦場とはどのようなものだったのか。中国への侵略に始まり太平洋や東南アジアに戦線を広げながら破局にいたる戦局を辿りつつ、兵士たちの残した膨大な体験記をもとに、戦場の実態を描き出す。

戦争の記憶の希薄化が進んでいる。本書は、戦争の記憶の希薄化に抗して、「兵士たちの戦場の記憶」という個人的な記録を再構成し、「歴史化」をはかる。著者は、851点の戦争体験者の回顧録(戦記など)を分析し、約100人分の証言を「点描的歴史叙述」として再構成した。こうして戦史は、戦場体験者の証言で肉付けられ、後世の読者に迫る。これまでは別物だった「歴史」が、「個人的体験」に裏づけられ、新たな歴史叙述といえよう。

第1章「侵攻と殺戮」(1939年〜41)は、泥沼化する日中戦争での、援蒋ルート遮断作戦、重慶爆撃、対ゲリラ戦が描かれる。第2章「勝利と代償」(41年〜43)では、泥沼の日中戦争から対米英開戦に踏み切った直後の束の間の勝利と、南方侵攻作戦の難攻が描かれる。第3章「蹉跌と消耗」(42年〜43)は、太平洋戦域での戦闘と、現地軍の飢餓など大消耗である。第4章「退却と飢餓」(43年〜44)は、防衛ラインが崩壊するなど退却の始まりである。第5章「崩壊と自滅」(44年10月〜12月)は、台湾沖航空戦を「大戦果」とする誤魔化し、レイテ沖海戦での特攻作戦の開始を描く。第6章「玉砕と生還」は、硫黄島や沖縄の絶望的な戦いと本土空襲・原爆投下による敗戦、および復員と抑留である。

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