編集長の毒吐録
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☆2021/3/3更新☆

《読書新世》❽
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『父 水上勉』(窪島誠一郎、白水社)は、「父」である作家・水上勉を、作家としての観点から描いた書であり、それゆえ作家の作品を読んでいることによって、いっそう読み応えが出てくる。窪島の、水上作品に対する敬意が全編から伝わる。

<私、ミズカミは、これまで人から借りた言葉を一度も使って参りませんでした。自分の言葉で、小説を書いて参りました>(親鸞賞授賞式典で)

<父が「宇野浩二伝」の初めに書いている人間―それははかりがたく知りがたい。という言葉である。わたしはその言葉をかみしめながら、今、「自分の知る」父親水上勉のことを書きだそうとしているのである><ここで父がいいあらわしたかったのは、あの「戦争」にかかわった軍部組織のもつ、非情なまでの人間差別の実態であったにちがいない><「誠ちゃん、これがぼくらの八月十五日になるかもしれんな」父がそういった。「ようやく、ぼくらの戦争が終わったんや」>

『傷ついた画布の物語 戦没画学生20の肖像』(窪島誠一郎、新日本出版社)で書いてあるのは、戦没画学生慰霊美術館「無言館」に収められている絵(造型)と作品の作者への追悼の文章だ。単なる作品批評ではなくて、作品から著者が受けた、戦争にまつわる様々なことがつづられる。おそらく類書がないであろう、貴重な書となっている。

<「無言館」が肝心のあなたたち戦没画学生の許しを得ていない、いわば無認可の美術館>と著者は言う。

<画学生大田章は自らの今わのきわのひとときを、目に入れても痛くないほど可愛がっていた妹和子の浴衣姿を画面にぬりこめ、ぬりこめ、その画作の完成をもって自己の「生」の記録にした><軍事郵便には「戦争のために祖国の美しい風景がどんどん傷められてゆくのが悲しい」とあった>

<衣笠山や古都逍遥の風景で知られる竹喬が、どれだけその心根ふかく、戦死したわが子を思い、その子の将来に期待していたが手にとれてわかる>

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