編集長の毒吐録
<<前のページ

☆2021/3/2更新☆

【読書雑記716】『秘本 大岡政談』 (井上ひさし、ちくま文庫、900円+税)。「これは書評か?」と言われるととまどってしまうが、井上ひさし作品の多読者として、この著作も期待を裏切られなかった。

江戸城書物奉行が観た大岡裁き描いた表題作など単行本未収録作品5篇に明治物2篇を収録してある。表題にもなっている作品では、世に有名な大岡が主人公ではなく、書物奉行の目を通して裁きを描く。この手法が面白い。書物奉行が扱う本は、普段は見すごされる書物ではあるが、読むと気になる。

「いろはにほへと捕物帳 藤むらの田舎饅頭」。饅頭の中から、女の死体が出てきた。スリラー仕立ての佳作。「質草」。戯作者が持ちネタを質入れする。黄表紙はストーリーと挿絵で売るエンタメ本。「合牢者」。薩長に牛耳られた明治時代に徳川直参の士族は日陰者だった。警察官の職を得た矢飼は、犯罪者として入牢してスパイするよう命じられる。逸品、辛い内容ではあるが読まずにはいられない。「帯勲車夫」。大津事件がテーマ。ロシア皇太子に斬りつけた男を、撃退した車夫が勲章をもらった。当初は暴漢が国賊、車夫が英雄という扱いだったが、ロシア大使一行が帰国すると手のひらを返したように逆転する。暴漢が愛国者扱いされるようになった。テロリスト礼賛。

Smart Renewal History by The Room

閉じる

First drafted 1.5.2001 Copy right(c)福祉広場
このホームページの文章・画像の無断転載は固くお断りします。
Site created by HAL PROMOTIN INC