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☆2019/3/7更新☆
【読書雑記517】『日本の同時代小説』(斎藤美奈子、岩波新書、880円+税)。メディア環境の急速な変化、世界情勢の早い動き、深刻化する格差社会、そして戦争に大震災・・。創作を取り巻く社会が激変したこの半世紀、「大文字の文学は終わった」と言われて久しいが、新しい小説が書き続けられ、読み継がれた。返りみる時そこに浮かぶ軌跡。本書は、名うての読み人であり書き手の手になる「同時代の文学史」と言えようか。
斎藤美奈子による現代小説入門。300人以上の作家が登場、結果として紹介される作品の大半には、数行しか費やされない。「書評の名手」といえども、数行では切れ味鋭くとはならない。
又吉直樹の芥川賞受賞作『火花』について、<内容は往年の私小説に近い自虐的なタワケ自慢と貧乏自慢>とコメント。純文学がメインだが、エンタメ、ノンフィクション、はてはケータイ小説まで視野に入れる。
敗戦から50年目に、岩波新書から川村湊の『戦後文学を問う』が出たが、併せて読めば、戦後から今日までの日本文学、ひいては日本の社会が捉えられる。21世紀に、いかに日本が貧しくなり、切羽詰まってきているかもわかる。とくにイラク戦争と格差拡大、さらに東日本大震災と原発事故を経た以降はひどい。
<こんな時代だからこそ、純文学は社会に背を向けて引き籠るのではなく、主体的に状況を引き受け、問題解決への糸口をさぐる……少なくともその覚悟は示すべきだろ>と著者は主張する。
Smart Renewal History by The Room
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