|
<<前のページ
☆2019/5/31更新☆
【読書雑記542】『石川啄木』(ドナルド・キーン/著、 角地幸男/訳、新潮社、2200円+税)。現代歌人の先駆となった啄木の壮烈な生涯をたどる評伝。啄木が自らの「故郷」と呼んだ渋民村。函館、小樽、釧路を転々とした北海道での漂泊。金田一京助友情。日本の日記文学の伝統を受け継いだ『ローマ字日記』。膨大な資料をもとに啄木の生涯と作品を読み解いた、93の著者が精魂傾けた傑作と言えようか。
30歳代に岩手を旅行。大勢の来場者を賑賑やかで立派な宮沢賢治の記念館と、訪れる人も少なく、蜘蛛の巣が張り閉館されたままの石川啄木の記念館の落差に驚いた。ドナルド・キーンは言う。<啄木の絶大な人気が復活する機会があるとしたら、それは人間が変化を求める時である。地下鉄の中でゲームの数々にふける退屈で無意味な行為は、いつしか偉大な音楽の豊かさや石川啄木の詩歌の人間性へと人を駆り立てることになるだろう>と。
あまたある啄木の生涯を、キーンは本書において他の啄木伝とは違う道を選んでいるが、それは啄木の日記を辿ることである。これは『百代の過客』で、日本文学の系譜が日記文学にあると喝破したキーンにとっては必然であった。キーンは述べる。<日記は啄木の最も注目すべき作品である。文学的興味を感じさせないページは一つもない。
啄木は、そこでは裸のままの自分を見せている・・啄木は日記を自分以外の読者のために書いたのではなかった。また啄木は誰かに告白しようとしたわけでもなくて、その日その日の感情の動きや経験を自分のために記録したのだった>。もちろん啄木が日記を書いていない時期については他の資料(手紙や他者の証言・手紙等)で補っている。
Smart Renewal History by The Room
|