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☆2019/10/8更新☆
【読書雑記576】『南北戦争の時代 19世紀』 (貴堂嘉之、岩波新書、840円+税)。全4巻のシリーズの第2巻。本書で、著者は、一国史を超え歩みを書く。本書は、「帝国」化しつつあったアメリカを引き裂いた内戦を、複数の対立軸とともに描く。国家の再建最中の国民の創造の過程をたどり、「奴隷制国家」から「移民国家」への変化を明らかにし、19世紀全体を捉えなおす。労作。
南北戦争の描き方には、研究者の数だけ答えがあると言ってもいいだろう。民主主義や立憲主義をめざす歩みの中で、あるいは人種主義や奴隷制度を克服する戦いの中で、さらには、南部のプランテーション経済と北部の産業資本と西部の自作農経済の矛盾と対立の中で、また国民国家形成の一例としてなど、多くの見方が存在する。本書は、このような見解にもふれるが、特定の視点に踏み込みいらない。
敢えて言えば、本書は、「連邦維持のための戦争」から、「奴隷解放のための戦争」へ性格を変え、戦時下に強化された連邦権限を拠り所に、奴隷制の廃止を明文化するに至った過程を綴る。それがゆえに、議会・大統領・憲法を巡る記述が多いのだが、世論の動向や地域や、諸階層の利害や意識の対立・変遷が分かる。本書の記述は、南北戦争の終了後の南部社会と人種差別の歴史にも及んでいる。
奴隷状態から解放され選挙権を得た黒人達が、南部の州法により徐々に権利を奪われ、経済的にも従属的立場にもどされ、クー・クラックス・クランの暴力にもさらされる苦難の道程。公民権運動によって再び地位を回復することに成功したものの、なお残るレイシズムなど重い課題を提示して終わっている。
著者は、「多様な移民社会の現実が、労働者の団結を破壊し、白人性を核とする階級の人種化を生み出し、排外主義的な性格を帯びるきっかけとなっていった」というが、それはトランプを生んだラストベルトの反応を思い出させる。
Smart Renewal History by The Room
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