|
<<前のページ
☆2020/1/14更新☆
【読書雑記603】『歴史紀行 峠をあるく』 (井出孫六、筑摩書房、?)。友人からもらった改造本ゆえ、価格不明。一気に読んだ。<峠という文字の成り立ちについて、あらためて思いをよせることになったのは、秩父事件の道をたどって十国峠にでむいた折り、夏草におおわれた石仏のまえで、乱れた息を整えながら、休息をとっていたときのことだった・・「山を上(、)り山を下(、)ると書けば、そこに峠という文字ができる・・>が本著の書き出し。
群馬・長野の県境にある十石峠は、マニアには人気の峠という。昔は、この峠を越える正式な国道はなく、村道を国道として代用したものだった。その道は、昼なお暗い深山幽谷の狭路であり、舗装すら施されていない山道が続いた。近代交通から取り残されてしまった感のある十石峠だが、かつては信州と上州・武州を結ぶ重要な交通路だった。米が穫れない上州に、佐久盆地からは十石の米が運びこまれた。この峠は、食をつなぐ命の道だった。
遡ること約100年の昔、秩父に旗を挙げた困民党が最期の望みをかけ、この峠を佐久へと越えた。著者は、佐久の出身。全編を通じて、困民党への想いがこもる。著者が言わんとしている点は、この十石峠編に集約されていると言っていいだろう。峠を思うことはまた、自然と共生してきた人間の営みを想うことではないか。本書は著者の史観が色濃く反映した歴史紀行作品。
十石峠-秩父事件と地図(長野・群馬)/洞ケ峠-戦国と日和見(京都・大阪)/笛吹峠-遠野物語と南部一揆(岩手)/二重峠-幕末と処士横議(熊本)/赤土峠-草莽の士と脱藩(高知)/乙女峠-維新と切支丹殉教(島根)/御殿峠-絹の道と困民党(東京)/狩勝峠-トンネルとバッタ塚(北海道)/大菩薩峠-明治の終焉と裏街道(山梨)/野麦峠-ボッカと製糸女工(岐阜・長野)/人形峠-民話と原子力(岡山)/八達嶺-長城と蒙恬将軍(中国)
Smart Renewal History by The Room
|