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☆2020/2/7更新☆
【読書雑記609】『女性のいない民主主義』 (前田健太郎、岩波新書、820円+税)。日本では男性に政治権力が集中している。何故、日本社会は、女性を政治から締め出してきたのか。女性が極端な少数派である日本政治は、そもそも民主主義と言えるのか。客観性や中立性を掲げてきた政治学は、男性にとっては重要な問題を扱う「男性の政治学」に過ぎなかったのではないか。著者は、「政治」から、男性超優位構造からの脱する道を模索する。時宜を得た好著。
「健康」な男性が築いた社会や文化に、違う時間感覚と身体感覚、感受性を持った女性や多様な人々が寸法の合わない服を着て暮らさざるを得ない事情を本書から感じた。女性の量的比率が増えるだけでは、女性としての独自性を活かせない。女性が主体の社会や文化を築いていたなら、違う歴史になっていたかもしれない。
著者は、社会を良くするには女性の存在が必要である、女性が軽んじられる社会は弱者も少数派も差別する社会であるとし、“ジェンダー視点”から考察する。日本の現実は、世界経済フォーラムが発表した男女格差の報告書では、日本は153ヵ国のうち、過去最低の121位。日本の政治は、男性に権力が集中している特異な国だ。女性議員の数が30%程度になって初めて、女性は本来の力を発揮でき、男性と対等に意見を言えるようになるという報告もある(クリティカル・マス)。
既存の政党が、男性優位を改め、女性を擁立することが必要だ。日本の女性議員数が先進国よりも低い水準にあるのは、「ジェンダー・クオーター」が導入されてこなかったことにある。少子高齢化が、男性稼ぎ主モデルの福祉国家の帰結であるだけでなく、それが持続する原因ともなっている。日本は育児支援が充実する前に高齢化が進行し始めたため、政策転換が難しくなっているのではないか。
Smart Renewal History by The Room
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