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☆2020/2/15更新☆
【書評雑記611】『出版文化と編集者の仕事 個人的な体験から』 (大竹永介、社会評論社、1700円+税)。著者は、新人作家を担当する面白さと企画を通すまでの苦労を語る。編集者生活(僕にも編集者生活があった)をふりかえり、エピソードが語る体験的編集者論と言えようか。編集者とはどういう仕事なのか。そもそも出版するとはどういう意味なのか。デジタル時代だからこそ、出版を希望する人にも、現に携わっている人にも読んでもらいたい一冊。
著者はカリスマ編集者ではないと語っている。華々しい経歴ではないのかもしれないが、少女漫画家の大和和紀から井上ひさし、海外の絵本作家まで、「大家」と真剣で渡りあってきた。編集者としての40年は、出版業界の貴重な断面史だ。著者は講談社に席を置き、主に少女まんが、児童書の編集に長く携わった。編集者生活を回顧した自叙伝。児童局長、取締役などを歴任し、2015年現役を退いている。
著者は、少女マンガ以外にも一般書(翻訳書)などの編集もいろいろとやった。遅筆家の井上ひさしに頼んで何年という年月を経て本になったのが『井上ひさしの子どもたちにつたえる日本国憲法』だそうだ。そのほか、翻訳絵本として『きみのからだのきたないもの学 』などもあり、この出版の裏話なども綴られる。同志社大学に進み、土井たか子などとも同級生になったこともあったという。共産主義にもかなり共鳴を覚え、日米安保改定反対デモには参加していたという。
「組合に元気がなかったら、日本はすぐファシズムに走ります。それてはダメです。そういった意味で、私は労働組合を支持します」と著者は言う。
Smart Renewal History by The Room
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