編集長の毒吐録
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☆2020/2/18更新☆

【読書雑記612】『資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐、集英社、980円+税)。【世界最高峰の知性たちが描く、危機の時代の羅針盤】とは、出版社の惹句。マルクス・ガブリエルは哲学者、『なぜ世界は存在しないのか』などがあり、マイケル・ハートには『<帝国>』(ネグリとの共著)があり、ポール・メイソンは『ポストキャピタリズム』を上梓した経済ジャーナリスト。斎藤幸平は87年生まれの経済思想家。興味深い本。

第1部 マイケル・ハート<資本主義の危機/政治主義の罠/<コモン>から始まる新たな民主主義/貨幣の力とベーシックインカム>。第2部 マルクス・ガブリエル<「ポスト真実」の時代を生んだ真犯人/「人間の終焉」と相対主義/ 新実在論で民主主義を取り戻す/未来への大分岐―環境危機とサイバー独裁>。第3部 ポール・メイソン<資本の抵抗―GAFAの独占はなぜ起きた?/シンギュラリティが脅かす人間の条件/資本主義では環境危機を乗り越えられない/生き延びるためのポストキャピタリズム>。

ガブリエルは≪「客観的事実」というのは非常に重要であるが、今の時代はその客観的事実を否定する「ポスト真実」の時代である。「ポスト真実」の時代とは「相対主義」の時代である。「相対主義」とは、世界のどこでも通用する普遍的な意義ある概念なんてものは存在しない、存在するのは、土地ごと、文化ごとのローカルな決定だけだ≫と言う。

「相対主義者」は、自明と考える価値=普遍的な価値が、時代や場所が異なる状況化では妥当性を失うと考える。そして、その他者の事を人間ではない存在と考えるようになり、この「非人間化」の考えは、ただちに暴力の正当化を生み出す。なぜなら相手は鳥や豚のようなものだからである。その非人間化の最終地点が、ナチスの強制収容所ではないか。ガブリエルの、「客観的事実の危機」と「他者の非人間化」というキーワードによる現代社会の分析は鋭い。

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