編集長の毒吐録
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☆2020/4/28更新☆

【読書雑記632】『日本の神々』 (谷川健一、岩波新書、660円+税)。本書には、「日本人」の心のありよう(信仰)のもといにあるものが詰まっている。日本列島に住んだ人は、風も樹も山もすべて「可畏(かしこ)きもの」と考え、それらをカミと捉えた。 災いをもたらすものも、逆に実りや大漁をもたらすものも、すべからく人知の及ばざる自然を畏怖の対象とした。これら神々の運命を辿り、暮らしの原像に迫る。

記紀のみならず、列島各地を隈なく見、聞き取り、書き取った膨大な蓄積を背景に、洞察の言葉が紡ぎ出される。密度の濃い、思索と経験だった。「日本」と「日本人」を知るために役立つ。民俗信仰を扱う本書は、神の原型に迫りたいと思うとき光彩を放つ。好著。

著者は、記紀以前の日本の神々の手がかりを奄美・沖縄(南西諸島)に手がかりを求める。南の島の小さな神々に心を寄せ、それらの「小さく」「可畏き」神々が日本人の根底にある世界観や死生観を解き明かすと考えた。

八重山では、生れたばかりの子どもが外出するとき、鍋墨で×印や十印を顔につけた。これは邪神の侵入を防ぐまじないだった。喜界島では、子どもが生れると、母が臍をついでいる間、家人の誰かがウブガミの代わりにイヤギ(斎矢木)をさす。

日本列島の中央部では、異俗の神が横行した。夜は「可畏きもの」たちの跳梁する舞台であった。古代日本と八重山の双方に、夜は人間の力を超えた神の世界であるとする考えがあったという。本書には、さまざまな日本古来の神々が紹介されている。

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