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☆2020/5/2更新☆
【読書雑記633】『伊勢神宮と斎宮』 (西宮秀紀、岩波新書、840円+税)。天皇を「天皇」たらしめている宗教的権威は、皇祖神・天照大神を祀る伊勢神宮だけではなく、皇女が住まう斎宮と取り行なう祭祀にあるだろう。本書は記紀に起源をもとめ、みやこから離れた遠隔地(伊勢)に置かれた政治的理由、古代国家の展開との関わりを解き明かす。祭祀が今に続く「不思議」に迫る。好著。
伊勢神宮は、「律令国家」としての日本の「天皇制」を紡いできた。また斎宮(さいくう)と呼ばれる天皇の(主に)娘を何度も禊ぎさせて伊勢に赴かせ、その天皇の代の間は離ればなれにする制度、これがなぜ、どうして成立したかを論じる。
飛鳥・奈良時代から平安時代までの伊勢神宮を概観、あわせて斎宮の歴史を紹介する。神名や地名が膨大であり、合わせて人名も豊富に紹介される。概説書が多いなか、記紀神話など豊富な資料に基づいて記述されている。斎宮は、天皇に代わりに、伊勢神宮の天照大神に仕える斎王の住まう所であった。
そこは碁盤の目状に道路が走り、木々が植えられ、伊勢神宮の社殿と同じ建物が100棟以上も建ち並んだ。そこには斎宮寮を運営する官人や斎王に仕える女官、雑用係などあわせて500人以上もの人々が起居し、九州の太宰府に次ぐ規模を持っていたという。また、斎王を中心とした都市であることから、斎宮では貝合や和歌など「都ぶりな遊び」が流行した。都との往来もあり、近隣の地域からさまざまな物資が集まるこの地方の文化の拠点でもあったという
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