編集長の毒吐録
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☆2020/10/25更新☆

<きのうを振り返りあしたを見晴るかす18>【「連帯」の選挙】 映画『幸せのありか』(マチェイ・ピェブシッア監督、ポーランド、107分、2013年)を観てきました。脳性麻痺を抱える男(マテウシュ)の30歳までの困難を描く作品ですが、いくつかのことを映画は描いています。大きな背景として、1980年代末の、「連帯」の選挙での勝利が扱われます。

ある出来事が「挿話」のようにさしはさまれます。マテウシュの父親は「連帯」の熱心な支持者らしいのですが、この日、すぐに帰ってくるはずの父親が待てど暮らせどなかなか戻って来ません。父親好きというか、父親のケアに慣れ親しんでいるマテウシュ・・、恋焦がれるマテウシュ、その姿がせつなく迫ります。「連帯」の選挙での勝利を祝う花火を窓枠から主人公は見つめます。「言葉」を持たない主人公の心の内と、「障害者」に接するときの「常識」のようなものをこのシーンは表わしています。「窓枠」の先にある花火、社会の大きな変化を「窓枠の花火」は示します。それを見つめる主人公の目が印象深いのです。

レッテルを貼りつけることが困難を増幅します。医師という「専門家」が困難のレッテルを貼り、「言語聴覚士」を名乗る専門家が、「意思を表わせない」というレッテルを乗り越えます。マテウシュは変わりません。変わる、あるいは変わらなければならないのは周りの方、そんなことこの映画は教えてくれます。

「植物のような状態」と診断した医師ですが、主人公は両親のもとで育ちます。父の突然の死・・。しかし、父から教わった星空を見上げる歓びを忘れることはありませんでした。彼は、姉の結婚を機に知的障害養護施設に入れられます。年老いた母やスタッフに不満をぶつけるマテウシュは、ある日、「私は植物ではない」との意思を示すのですが、周囲はそのメッセージを受け取れませんでした。

Smart Renewal History by The Room

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