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☆2020/12/8更新☆
【読書雑記693】『日没』(桐野夏生、岩波書店、1800円+税)。小説家・マッツ夢井のもとに、「文化文芸倫理向上委員会」なる政府組織から手紙が届いた。召喚状だった。「文化文芸倫理向上委員会」なる政府組織が指定する出頭先に向かった彼女だが、彼女は断崖に建つ海辺の「療養所」に「収容」される。ここの組織の責任者は、「社会に適応した小説」を書けと作家に命ずる。終わりの見えない、長い軟禁生活が始まる。悪夢のようだった「更生」を迫る・・組織、抗う作家。作家の孤独な闘いは続く・・。
世界的な風潮と日本の特別な事情を踏まえて書かれた小説。小説世界の事はかたづけられない「出来事」なるがゆえに、それが「恐怖」として迫る、いまの「風潮」に警鐘を鳴らす。ミステリー仕立ての社会派作品。秀作。
著者は言う、「権力はひとつ妥協すれば、ひとつ罠をしかける」「政府の言うことを聞く愚民を大量生産することにあるのでしょう」と。本作品は、フィクションである。しかしこの間の権力と政権の動きをみる時、それが単なる想像の産物とは片づけられないリアリティーを持って迫ってくる。突然、国から召喚状が届くという設定も無理がない。ゆえに怖い。読者から寄せられた著作本へのクレームにより「ブンリン」と呼ばれる療養所で、風俗を乱す小説執筆をやめるように「療養」を促される。そのストリーも「今」を見ているようだった。 日本学術会議での菅首相による任命拒否の問題が社会的に大きな問題になっているこのタイミングでの刊行に「恐怖」すら覚えた。
Smart Renewal History by The Room
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