編集長の毒吐録
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☆2020/12/22更新☆

【読書雑記698】『夏目漱石『心』を読み直す 病と人間、コロナウイルス禍のもとで』(小森陽一、かもがわ出版、1200円+税)。漱石は「感染症の時代」に生きた。それだけでなく、自分も痘痕によるあばたを持って生きた。読んだはずの『心』を、感染症を軸に読み直すのが本書の狙いだ。日本が帝国主義的国家になる過程と感染症の流行は重なっており、そこから何が見えるのか。

第I章 海水浴場と雑司ケ谷霊園/第II章 明治天皇の病死/第III章 先生の両親と腸チフス/第IV章 精神的向上という病

『心』がコロナ禍で読み直し(新規)されているという。確かに新潮文庫で出ている本書は売上ベストワンと聞けば、その内容もあって分からないこともない。書に出てくる先生が、高等遊民でいられるのは日露戦争の公債所有者だからとか、漱石は種痘が失敗してイギリスで白い目で見られていたとか、腸チフスが流行ったのは、帰国兵からだとか明治という時代を深く読み解くと見えてくる。この時代の不条理とも言えることだが、『心』連載中は、娘の結婚は親が決めるのが当たり前だった。しかしながら娘の母は結婚の申し出に「あの子が不承知のところへ私が嫁にやるはずありませんから」ときっぱり言う。時代を先取りし、大正デモクラシーの時代の到来を予告した、とは言い過ぎか。

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