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☆2021/2/2更新☆
【読書雑記709】『黒い皮膚・白い仮面』(フランツ ファノン/著、海老坂武・加藤晴久/訳、みすず書房、3400円+税)。精神科医である著者は、本書で黒人差別の構造に分け入り、差別構造に切り込み、「なぜ差別がなくらないのか」「どうすれば差別構造を緩和できるのか」を問う。読みやすくはないが、好著。
フランス領カリブ海マルティニークで生まれた著者は、アフリカから連れてこられた奴隷の子孫であり、「黒人」なるが故の差別を経験する。人間の自由と平等を信じ、戦時中は自由フランス軍へ志願し、戦後は本国フランスで学んで精神科医となった著者は、「白人」によって「黒人」なるがゆえに、劣った存在として扱われる現実に、怒り、憤りと疎外感を覚える。植民地主義の影が残り、同胞(同国人あるいは人間)が差別する現代に、人間が抑圧から「解放」されるにはどのような視点が必要なのか。
<黒人の不幸は奴隷化されたということである。白人の不幸と非人間性は人間を殺してしまったということである。黒人であるこの私の欲することはただひとつ。道具に人間を支配させてはならぬこと。人間による人間の、つまり他者による私の奴隷化が永遠に止むこと。…ニグロは存在しない。白人も同様に存在しない>。筆は、1950年代のフランスリヨン市の公園での出来事から始まる。公園を一人の医学生が歩いている。著者だ。自分の名前さえ書けない人が大勢住んでいる地域で、彼は医学生になった。彼は「エリート」への道を獲得した。「私は人生の勝者である」と著者は思っていたという。彼の目の前で、少年が転んで倒れた。彼はかけよって少年を抱き起こし、笑顔で「大丈夫ですか?」と問うた。少年は彼を見ると、恐怖の叫び声を上げた。<ママ、怖いよ!黒人だよ!」。その言葉で、彼の内面世界は粉々に打ち砕かれた。「驚愕という生易しいものではありませんでした。必死に努力して築いてきたもの全てが跡形もなく崩壊し、消えました>。
Smart Renewal History by The Room
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