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☆2019/5/14更新☆
【読書雑記537】『暗夜遍歴』(辻井喬、講談社文芸文庫、1500円+税)。息子と母、父親の3者を描いた自伝的小説。月子の父は陥れられた。それによって小田村大助は登場した。小田村と結ばれる月子。政治と実業の世界の鬼であった小田村は、奔放な性を生き、女性遍歴を重ねる。月子は、短歌に道を見出すことで、運命を呪い、傷を癒し、自らを支える。
月子の息子・由雄(著者)の眼を通し、母・月子、父・大助の愛憎を冷徹に描いた自伝的作品。亡母・月子への、著者(堤清二)の痛切なる鎮魂の歌か。
堤清二の父親は堤康次郎、彼は、衆議院議長も務めた政治家かつ実業家、西武グループの創始者でもある。
<母の死後、僕は彼女をモデルにした小説を書きたいと思い、書かなければならないと自分に言いきかせた。なぜなら彼女は敗戦によって女性が人間として扱われる以前の、最も苦しみを味わった女の一人だったからだ。いろんな苦しみの形があり、それぞれが言い表せないような淵に沈みながら必死に生きてきたのが、日本の女性の歴史だと僕は 思っている。母の苦しみはそんな女性哀史のひとつの姿を体現しているのだった>とは著者の言。
著者が心配したのは、配偶者亡き後、気兼ねなく生きることで母が詠む短歌が堕落したものにならないかということだったが、それはまったくの杞憂だった。合計で9冊の歌集を刊行する。母をモデルにした「女の一生」。
<由雄は親が住んだ場所の中間の場所に生きているのだ。とすれば、混じり方こそ久美子と違っていたが、彼も月子の、ひいては柴山家と小田村大助の血を引いているのだ>」と、月子が亡くなってから由雄が述懐する(筆者注。久美子は由雄の妹)。
Smart Renewal History by The Room
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