編集長の毒吐録
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☆2019/9/8更新☆

【読書雑記568】『むこう岸』(安田夏菜、講談社、1400円+税)。和真は有名進学校に通う「落ちこぼれ」、中三で公立中学校に転じた。父を亡くした樹希は、母と妹と3人暮し、生活保護受給家庭だ。「カフェ・居場所」で顔を合わせながら、お互いの環境を理解できない。相手を疎ましく思う2人だった。「貧しさゆえに機会を奪われる」ことの不条理に気が付く2人、できることがあるのではないか。「貧困」に対し、中学生にも、することがあるのではないか。

小さなころから、勉強だけは得意だった和真は、受験勉強の結果、有名進学校に合格する。しかしながら、トップレベルの生徒たちとの埋めようもない差を見せつけられ、中3で公立中学への転校を余儀なくされた。小さい頃からタフな女の子だった樹希は、小5で父を事故で亡くした。残された母のお腹には新しい命が宿っていた。いまは母と妹と3人、生活保護を受けて暮らしている。

ちょっとしたきっかけで顔を出すようになった「カフェ・居場所」で互いの生活環境を知る2人。和真は「生活レベルが低い人たちが苦手だ」と樹希に苦手意識を持ち、樹希は「恵まれた家で育ってきたくせに」と、和真が見せる甘さを許せない。2人の前にある「貧困」に、彼ら自身が解決のために動けることはないのか。確かに現代日本は不条理だらけだ。子どもたちには、明るい方へ泳いでいく力があると、本書は謳う。作者はこの本に大きな希望を込めたのではないか。良書。

Smart Renewal History by The Room

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