あんな本、こんな本
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『心はつながっている』
グエン・ドク
 ベトちゃんドクちゃんで知られた結合双生児が分離手術を受けたのは1988年10月4日、2人が7才のときであった。それから、13年が経過し、2人は20才になった。

 兄のベト君は現在まだ寝たきりの生活であるが、弟のドク君は、車椅子、松葉杖、義足を駆使して、元気に活躍している。ドク君は、兄の病状を気遣いながら、兄の分まで、精一杯生きるのが、自分の務めであると考えている。サッカーに熱中し、宇多田ヒカルの歌が大好きであり、インターネットに興味をしめし、将来の夢はコンピューター関連の会社をつくることであるという。前向きのドク君に、「よかったね」と手をさしのべ握手をしてみたくなる本である。京都の藤本文朗氏らの「ベトちゃん、ドクちゃんの発達を願う会」や日本の支援団体にも心からの感謝と連帯の言葉が述べられ、「日本はぼくのいちばん好きな国」であるとドク君はいってくれている。

 しかし、省みて、小生もベトナム反戦を叫んできた者ではあるが、日本からベトナムへの出撃を完全に阻止できたわけでもなく、現在も米軍基地の存在を許している日本に住んでいる事を考えるとき、忸怩(じくじ)たる思いがする。本書にも触れられているように、ベトナム社会の底辺、特に農村部のダイオキシン汚染による奇形児の数は、統計に現れない部分も想像以上に多く、深刻な状況はまだ続いているのである。
ベトナムは決して過去の出来事ではないことを再確認させてくれる本である。平和の「心をつないでいく」ため、一読をお勧めする。
『心はつながっている』
グエン・ドク著
グエン・ファン・ホン訳
幻冬社
本体1,000円



 筆者紹介
瀧本正史
京都市内の宝ヶ池近くに居を構える自由人。長年のサラリーマン生活から解き放たれるや、持ち前の遊び心が溢れ出て、写真、渓流釣り、そして読書と興味は広がる。本誌に写真を多く寄せている。つれづれなるままの読書の記録。
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