性同一性障害なんて大きらい〜当事者の泣き笑い
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☆02/21更新☆

第6回 ホルモン療法の成果
 
 ボランティアの場でも仕事先でも、習い事に行っても電車やバスの中でも、初対面の人は私を女と見ます。

 装いが女だから、ではありません。

 私は、スカートはあまりはかないし、化粧もほとんどしません。ノーメイクにメンズのジーパン、メンズのセーターででかけることさえあります。いいかげんなものです。

 それでも女で通るのは、顔つき・体つきが女だからでしょう。やわらかな肌の質感や、服を通して漂う体の丸みが、女の印象を相手に与えるのだと思います。

 これは、ホルモン療法の成果です。

 性同一性障害にもいろいろあるのですが、私自身は、社会生活の性を変えることよりも体の性転換を強く望むタイプです。

 性転換と聞くと多くの人は、手術を思い浮かべることでしょう。しかしホルモン療法も、“転換”効果は非常に大きいのです。

 私は病院の産婦人科で、女性ホルモンの投与を受けています。飲み薬を1日2回、注射を毎月2回。もう3年以上続けているし、これからもずっと続き(け)ます。

 「ホルモン療法をして、どうですか?」と主治医から聞かれる私は、こう答えます。

 「心から幸せです」。


 女性ホルモンは私の体の男性的な特徴を、おおかた消してくれました。

 腕や肩・おしりなどの筋肉の直線的なスジが脂肪の丸みに置き換わり、胸も膨らんで、いわゆる“女らしいふっくらした体つき”になりました(太ったわけではないです。念のため)。

 肌がきめ細かくなり、ソフトな弾力が出ました。

 精子が作られなくなったため、マスターベーションが皆無になりました。射精したいという衝動自体が、全く無くなりました。これはもう、体が浄化されるような、本当にスッキリした気分です。

 精子が溜まると性衝動が高まって、何かの形で射精しなければならない。

 こういう自分が嫌で嫌で、私は何年か前のある日、マスターベーションをした後、心の底から自分のことが嫌になって、一人で大泣きしたことがあります。

 泣くだけですんでよかったのです。私には将来病院でホルモン療法や手術ができるという希望があったから、自傷や自殺というような、それ以上の自己否定に進まず、気持ちを収めることができたのです。

 ちょっと話がズレました。

 ホルモン療法のおかげで私は女の体に近づけているし、その結果、女社会にも違和感無く居られます。

 こういう医療を受けることができるのだから、やっぱり私は幸せなのです。

 そして今は、性転換手術(医学的には性別再形成手術と言います)に向けて、大学病院の倫理委員会の決済を待っています。ゴーサインが出るのを願いながら。
筆者紹介
タカノキョウコ
会社員・団体職員を経て、現在、フリーランスコピーライター。00年、大学医学部付属病院で性同一性障害の診断を受け、精神療法から治療開始。02年、性同一性障害を理由に戸籍名を変更、03年に転居をし、地域生活・家庭生活・仕事など、生活すべてを女性にシフト完了。残る課題は性別再形成手術(いわゆる性転換手術)と、各種制度の改正となっている。 
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