かよこさんの子育て・子離れ録
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☆01/01更新☆

第182回 朝からハンバーグ

 比叡山が白く煙る日がやってきました。朝の寝床でウトウトしていると、遠くのお寺の鐘がゴーンと響いてきます。法然院さんでしょうか。

 毎年、おせち料理が残ってしまうので、今年は特別に作らないことにしました。あふるの手描き年賀状を100枚用意した年もありましたが、それもパスです。孫たちもお嫁ちゃんの実家に行くそうなので、今年はゆっくり過ごします。娘は年末年始もバイトです。

 ほとんど家にいた娘が出かけるようになり、顔を合わすことさえ難しい毎日です。子どもが生まれてから30年、ようやくやってきた子離れの季節でしょうか。それでも晴れ晴れとした気分になれないのはなぜでしょう。

 今日はあふるのアパートに行き、朝ごはんを食べさせ、さあ、出かけようとしたら、あふるの頭がフケだらけでした。わたしは慌てて台所の流しで洗髪しました。あふるは「毎日洗ってるんやけど・・・」と言い訳をします。あの頭は、一週間以上洗っていない頭です!そういえば最近は一緒に銭湯も行ってなかったなと反省。老眼鏡をかけないとフケにも気がつかなくなっています。髭剃り、歯磨き、鼻毛切り、洗顔などのチェックは小まめにしなければならないことを痛感させられ、溜息が出ました。「今日はゲームのソフト買いに行くんやー」と言ってるあふるは、そのことばかり気になっています。「こんな頭してたらカノジョできるわけないやろ!」と叱ってみても手ごたえはありません。わたしの子離れは永遠にやって来ないような気がします。

 先日は三男が「お母さん、大学院、行ってもええか?」と言うし、娘はこれから大学進学です。我が家は、人生の中で一番子どもにお金がかかる時期を迎えています。学校には縁がないと思ってた我が家の想定外の出費です。

 最近は、娘とバスや電車に乗ると、わたしが先に座るようになりました。「先に座ろう」と、気持ちを切り換えました。30年間、子ども優先乗車でしたが、止めました。これからは、自分が車内でふらつかないよう、気をつけなければならないと思っています。

 老いは誰にでもやって来ますが、受け止めるのは難しいことだと気が付きました。買い置きしてあった食材を忘れて調理したり、家事の段取りが悪くなりました。とてもショックです。無理がきかなくなった身体をどうなだめて、どう使ったら良いのか、迷うことがあります。この頃は、意識的に休養を設定することが大事だと思っています。また反対に、ようやく巡って来た体験もしています。あふると二人で旅行に出かけられるようになりました。温泉も楽しんでいます。去年はアラン・ドロンの映画をスクリーンで観ました。願ってたことが叶ってしまうと、先が短くなったような感覚もあり、複雑です。

 娘が家にいなくなって、食事は皆、ばらばらにとるようになりました。わたしは、朝しか子ども達のご飯を用意することができなくなり、朝からハンバーグや鯖寿司を作っています。

 2012年もよろしくお願いいたします。

筆者紹介
渡辺 加代子
1955年、千葉県生まれ。ホームヘルパー。 25、23、19、13歳(2006年12月現在)の4人の子ども母親、上3人は男の子。2005年には長男に孫が誕生。
長男は19歳で結婚、15歳から海外生活が多く、アフリカでサッカーのプロ選手だったこともあり、現在、BMX自転車のプロ競技者。二男あふるさんは、丹波養護学校卒業後京都市内のパン屋で働く。絵描きとしてのデビューは2003年3月。三男は日本将棋連盟のプロ棋士養成所である奨励会の会員。5才のときから保育園に通えなくなり、小中高と不登校。フリースクールにたまに顔を出す。長女は小学校を4日間だけ体験。引きこもりにしては穏やかにすごす。2006年、中学一年生で突然学校に通い始めた。
「三人の子と年1回の海外旅行を楽しむことを目標にしているが、3回しか行けていない」と嘆きつつ、「 三男の暴れがすごかったので、いろんなことが転換してしまった。つらい体験だったけど、やり直しができてよかった。おかしな子ばかりで、まだ子育ての現役を痛感させられる」と屈託なく微笑む不思議な人。
 
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