〈すっかり季節が変わったボローニャ〉
9月の声をきくとすっかり秋である。短時日に初秋から秋冷を迎えていく。真夏から2〜3週間で季節が展開していく街の姿に驚きである。9月8日、ボローニャ市内の小・中・高校、並びにボローニャ大学の新年度が始まった。ボローニャ市人口40万人弱のうち、ボローニャ大学、同芸術大学などの学生数10万人弱。文字通り学生の街であり、次々に学生が戻ってくる感じである。
そして、商店が一斉に花開いたように明るくなってくる。ボローニャ市中心部の経済活動を支える中小商店が動き出した、そんな感じである。ここにこんな店があったのか、ああここにも。CDカセットの店や文房具店あり、バイクの店あり、さまざまである。洋装店はすでに黒の革ジャンバーが並ぶ。冬支度である。
考えてみれば日本のように四季が均分されている国はまれかも知れない。ボローニャより少し北に位置するミラノ・トリノ・ヴェネチィアのイタリア北部地方が北海道・稚内と同程度の緯度である。さらに北に位置する多くのヨーロッパでは秋は極めて短いと聞く。夏シーズンにしか訪れたことのなかった私にとっても、新しい体験が展開していく。
写真はオペラのシーズンチケットの売出し告げる垂れ幕であり、劇・音楽・ダンスの催事案内である。そして秋物から冬物が店頭に並ぶ様子である。

オペラのシーズンチケットの売出し告げる垂れ幕

劇・音楽・ダンスの催事案内

冬物商品をのぞく客
〈秋、子どもまつりだ!〉
そうした案内の一つに「festa dei bambini」(子どもまつり、モンタニョラ公園)があった。
「L'avventura di diventare grandi」(成長への冒険)の呼びかけである。乳児から、年長児(銀紙のボールによるトンガリ帽子落とし競争、幅広テープの障害物による競争など)、中高生(ソフトバレー、ミニサッカー、バスケットなど)に分かれている。
長く教員生活を続け、愛知の教育・子育て運動の結成と発展にも関わってきたものとして、こうした祭りをみるとまた格別な思いがする。私はそうした取組みの過程で、イタリアにおける住民自治に支えられた子育て運動、アルチ・子ども組織(当時、会員130万人、13,000のサークルが加盟する文化の統一戦線)と交流する誘いをうけ、初めて外国へ、しかもイタリアへきたのは1985年である。実に18年前になる。
高度成長期とともに、せかせかと歩き続けてきた私にとって、見聞した幾つかは、「世界にはこんなにも違う国があるんだ」という素朴な感想であり、私にとっての最初のカルチャーショックそのものだった。
その時に、まぎれもなくこのボローニャ市を訪れ、素晴らしい絵画で飾られた市長室で市長・担当者と話合いをしたのも、昨日のことのように覚えている。教育・子育てをとりまく状況の厳しさのなかでも、その成果の一部が、関係者の手をつなぐ太い輪につながっているものと確信している。

第26回ボローニャ子どもまつり・中央舞台


マッジョーレ広場
〜サンドナート門までの親子サイクリング
〈来年に向けて、地域政策を決定づける熱い戦いは始まっている〉
地域政策研究にとって、公共政策部門を担当するいわゆる役所訪問は欠かすことはできない。私も9月に入り、関係方面への本格的なヒヤリングと資料収集を開始した。しかし、ボローニャ市へのヒヤリングには改めて身を引締めているところである。ここでボローニャ市を取り巻く政治状況の一端を簡単に説明しておこう。
イタリアでは、地方自治体は約8,200あり、人口150人程度から大規模な300万人までさまざまである。そしていま自治体再編計画も進んでいる。人口40万人弱のボローニャ市は有数の大都市である。
ボローニャ市政担当は、戦後は1945年から99年まで54年間、5人の市長(左派)がその任にあたってきた。そして1999年6月、現在のジョルジオ・グアザロッカ市長(右派)が当選した(注1)。氏は過去にベルルスコーニ首相の政党であるフォルツァ・イタリアに関係していたとのことである。
エミリア・ロマーニャ州、ボローニャ県は、ともに左派が政権を担当しており、一種のねじれ現象が起きている。県と市では政策的な意見の相違が当然存在する。
例えば、チェントロへの車の乗り入れの可否についても、県は道路が放射線状に広がっていることもあり、フェラーラのように規制を強化し、歩行者・観光客が自由に街を歩けるようにしたいと考えている。これに対して、市は、特に商業者の立場から、規制を無くし、自由に車で通行できるようにしたいと考えている。
任期5年の2004年6月に向けて、現市長への対立候補セルジオ・コッフェラーチ氏も指名されている。前回の市長交代により、「エミリアン・モデルの政策的崩壊の危機」と指摘する研究も報告されている(注2)。こうした成果を読みこなし、両者の政策的意見を踏まえた上で、厳密なヒヤリングを行うことの必要性を痛感している。
可能ならば、18年ぶりに市長室に入り、現市長の見解をうかがうこともできないだろうか、と密かに思っている。

資料収集に訪れた
ボローニャ県庁5階からの絶景の斜塔風景
(左は修復中)