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筆者の一人、直子さんは私と同年齢で、属している研究会(全国障害者問題研究会)も同じ。
8月の初めに、鹿児島市内で開かれたその研究会の帰りの空港で、ばったり出会った。私は一冊だけ持っていた自分の著書を「荷物になってごめん」といいながら、読んでほしくて渡した。その時に直子さんも「もうじき3人で本を出す」と言っていたが、それが本書だ。超多忙の親バカ母さん、新しい形のヒモを実践している父さん、そして客観的に自分育ちを振り返っている息子の三人が、大切な一人息子の成人を記念に家族の歴史をつづっている。
私は以前から、自分の子育てを語るのは、子どもが20歳を過ぎてから資格があると思っていた。
俳優や有名人が、子どもがまだ小さいのに偉そうなことを書いていると、よくそんな自信たっぷりなことがいえるなと呆れてしまう。子どもは、当たり前だが、「生き物」だ。刻々と変化し、そこに面白さがある。発達心理学が専門の直子さんの講演は、いつも軽快な語り口で、子どもの発達の妙味と子育ての辛苦、そして保育や療育の仕事の大切さを説かれる。聞いた人はみんな元気になる、全国から引っ張りダコの人だ。
その筆者がむき出しの生活とわが子の育ちを軸に、プライベートな部分を公開して、みんなに伝えたかったことは何か?その答えは郁夫さんのことばの中に見
つけられる。「困ったときはおたがいさま」、文中でこのひとことに出会ったとき、懐かしい人に久しぶりに会ったような感じがした。
大勢のご近所、保育所や学童の仲間、そして息子に助けられ、仕事と子育てに励み、さまざまな運動を引っ張ってきた夫婦のキーワードではなかっただろうか。少々あつかましくても困っているときは助けを求める。それが大きなネットワークになる。今、このひとことが言えずに一人で悩んでいる人が多いのではないだろうか。
近藤家は、息子は京都で下宿生活、愛犬も亡くなり家庭には夫婦という基本単位での生活が戻ってきた。私としてはちょっとうらやましい気分だが、きっとこれまで以上に忙しさが増していることと思う。
子どもが二十歳になったとき、誰もが子育てを振り返る一冊の文章が書けると思う。思い切り親バカな本。それは、はからずも入学してしまった子育て大学の卒論ではないだろうか。悩みの途中という方も多いと思うが、中間総括するのによい年齢だ。
本誌連載の“亮ちゃんの子育て親育ち日記”は、悪戦苦闘の子育てがヒヤヒヤドキドキと毎日楽しい。ヒモ生活(ゴメン)の先輩が20年前にもいたのだ。
暁夫くんがどんな彼女を連れてくるか、加奈子ちゃんがどんな彼氏を連れてくるのか、2人は20も年は離れているが、想像するだけでも楽しくなる。
(池添素・全障研副委員長) |
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『保育園っ子が20歳になるまで』
近藤直子・郁夫・暁夫著
ひとなる書房
本体価格1600円
2001年8月発行
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