作曲家の池辺さんは、この曲集の前書きで、「ひらのりょうこさんの書き下ろしの詩は、『京』の一人のろくろ師の心と細やかな情景を横糸に、そして『千年』の思いを縦糸に織った美しい和服のようで、僕を魅了した」と書いている。
その言葉の通り、魅了された作曲家は、詩にさらなる彩りと艶と香り、そして、快い音色を施して、演奏する者、聞く者の心をなごませてくれる。
ピアノ伴奏がまたすばらしい。
鴨川の清らかな流れに、水琴窟から聞こえてくる、チロロ、チロロという、ひそやかな千年の響きが重なり、第一楽章「白い曼珠沙華」から、演奏者はごく自然に「京」をうたう心地となる。
終章の「円形の天地 京都から」では、京都から未来へのメッセージを声高らかにうたっている自分に気付く。
けれども、さらにうたっていくと、もっと強い琴線に触れる。「地球は、世界は、これからどうなるのか?」「未来へ、あなたは何を伝えるのか!」と、強く問いかける全6楽章の構成となっている。
この作品は、京都音楽サークル協議会が、勤労者音楽祭の100回を記念して、「京都」を正面に据えて未来をうたおうと、ひらのさんと池辺さんに委嘱したものだ。昨秋の初演は大きな感動を呼び起こした。
今年6月10日(日)には「府民ホール アルティ」(京都市上京区)で、“もっと自覚的に、もっと深い感動をめざして”再演することになっている。
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(加藤東平・京都音楽サークル協議会「 きんおん」マネジャー) |