ゆらっちの作業所だより
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第20回 グループホームのキーパー体験
 先日、八木町での会議中に隣席の作業所所長の携帯が鳴った。どうも、作業所が運営しているグループホームのキーパーが「体調不良のため休みます」と突然いってきたらしい。
「なんでよりによってこんな日に!」と所長は困り顔。

女性職員がみんなフル稼働で代わりに寝泊まりする人がいないとのこと。そのホームは女性のホームなので男性が泊まるわけにはいかない。そこで、「私泊まることできるかもしれん」と言ってみた。所長は、渡りに船、とばかりに喜んでくれたので、あまり自信はなかったがやってみることにした。

 早速、夫くんに連絡すると、「ええよー」と気のいい返事。「ほなら、ご飯は外で食べたらいいねんな!」となんだかうれしそうである。「家で残り物食べてくれたらいいねんけど、・・まぁええわ」と私。口では「外食が好きなわけではないで」といいながら、やはり長年培った?習性はそう簡単に変わらないのだ。

 そのホームには知的障害者4人が暮らしている。キーパーは常時2名。2名を置くのは財政的にも大変だが、利用者のうち2人は重度の障害を持つ方なのでしかたがない。

もう一人のキーパーさんが慣れた人なので、教えてもらいながら、夕食の準備、食事、くつろぐ時間、入浴、就寝と一日を過ごす。夜はトイレ介助の必要な方の部屋で寝て、起床、朝食準備、食事、身支度、そして作業所へ出勤してもらったらキーパーの仕事はほぼ終了である。

 利用者の4人は、障害の重い人軽い人、年齢も20代から40代まで様々。その一人一人が自分の家として暮らす空間を、どう居心地のいいものにするのかはキーパーの手腕にかかっている。物理的なこともさることながら、会話や声かけの一つ一つが重要でまた難しい。

だれも、自分の家にいるときまで緊張したりしたくないし、指示もされたくない。たまには時間にルーズに夜更かししたりしたいというのもあるかもしれない。自分でできることは自分でしたい、できないことはキーパーに、その境目はどこなのか。

豊かな生活をつくるという仕事は、奥が深くてやりがいのある仕事だなとつくづく感じた。

そこで暮らし始めた40代の女性が、街頭署名をしたときにスピーチをしてくれた。「私はグループホームで暮らしていて楽しいです」という原稿を用意していたのに、当日持ってくるのを忘れたので、彼女はそのまましゃべり始めた。「私は今グループホームで暮らしています、寂しいです」。

そばにいた職員が「ホームで暮らして楽しいんやなぁ?」と聞き直すが、「寂しいです」と彼女は繰り返した。その本音に、障害の重い彼女が生まれてからずーっと、親と運命共同体のように生きてきた、その苦労と長い歳月を想った。

でも、ホームでの暮らしは彼女をきっと一回り大きくしてくれるに違いないと私は信じている。一晩寝起きをともにして、しりとり合戦をしただけだけど・・。

(次回更新は2月6日更新予定です)
 筆者紹介
由良浩美
きょうされん京都支部(京都府障害者共同作業所連絡会)の専従事務局員で事業担当。京都市中央卸売市場近くの事務所で、作業所の仲間、親、職員に思いをはせながら、ひとり仕事に励む。
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