勉さんの“よしなしごと”
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☆08/01更新☆

第69回 「がんばれ!日本」のいかがわしさ

 震災復興のスローガンなのか、やたらと「がんばれ!日本」コールが聞こえてくる。聞くたびごとに、その押しつけがましさに辟易している。また、最近買った本にも「がんばろう 東北」などと刷り込んだ帯がついていた。「がんばれ」の呼びかけが成り立つのは、その人が「がんばろうとしているとき」なのに、人の置かれた状況におかまいなく「がんばれ」では、「がんばりようがない」状態にある人に対する侮辱とさえ感じる。
 そもそも人が「がんばろう」と思うのは、生活に一定の見通しが立ったときである。主たる働き手や家族を喪い、頼れる親族もなく、家も職場もなくして途方にくれている人に、この呼びかけは虚しい。震災復興の主眼は、人に最低限の生きる術を提供することではないのか。東電救済の補正予算は組んでも、人の暮らしの復興は依然として後回しである。そんな気持ちでいるとき、次の詩を読み同感したので、以下紹介したい。

がんばれ!日本の民衆たちよ!

街を歩いていても電車に乗ってもテレビでも
むやみやたらに「がんばれ!」とさけんでいる。
だれがだれに何のために正体をかくしたまま
「がんばれ!がんばれ!」といっているのか。

これでは戦時中の戦意高揚の宣伝ではないか。
夜空の高みから民衆を見くだすすがたではないか。
原爆の恐怖を原子力の平和利用にすりかえて
国内に54基も原発をつくって儲けた奴は誰か。

使用済み核燃料の捨て場も処理方法もない。
生命を殺し空と海と自然を汚しながら、まだ
原爆とは違って原発は絶対安全だと言い張る
そんな手合いが列島にとぐろを巻いている。

「がんばれ」の語源は「我を張れ」だという。
自分の意思と要求を実現しようということだ。
核兵器をなくせ!原発はすべて廃棄しろ!
また今年もヒロシマ・ナガサキの8月がくる。

(ともろぎ ゆきお)

出所は、全国老後保障地域団体連絡会機関紙「高齢期とくらし」2011年7月20日。

筆者紹介
鈴木 勉
筆者は京都の大学に勤める学者。ヘビースモーカーでアルコール好き。気さくな人柄が魅力、怖い顔をして、フットワーク軽く、世界と日本を駆け回っている。障害者問題を語らすと天下一品。
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