梅浩先生のボローニャだより
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第2節 ボローニャの夏、点描

 選りすぐりの観光客かどうかはともかく、ボローニャ市民以外に多くの観光客が集まることは確かである。この炎暑の中を、各国からの学生や、夫婦連れが、肌を露わに、あるいは半ズボン姿で歩いていく。リュックを背負うものや、遅い時間にボローニャ駅から旅立っていくものもいる。きょうは、そのボローニャの夏、点描と題し、断片を報告しよう。

〈ボローニャ一番のジェラート〉

イタリアのこの暑さに、ジェラートが欲しくなることはいうまでもない。確かではないが、一説によるとボローニャ一番という、ジェラート屋に行ってみることにした。

斜塔から南方のカスティリオーニ通りにあるジェラート屋である。もとの城壁に囲まれたチェントロ内にあることは間違いないが、斜塔からは少し離れたところにある。しかもこの暑さから察しがつくように、一般に午後1時半から3時半までは一旦閉店・休憩である。中心部からやや遠ざかるに従い、完全閉店である。人っ子一人いない様子である。

「やってるかな」と心配しながら近づくと、その店だけは繁盛しているではないか。外から見る限り何の変哲もない様である。盛り付けるジェラートは、20種類もあろうか。

とてもその名前は、私には縁もない感じである。かろうじてチョコレートやレモンはわかる。注文して口にする。この日照の中を、大の大人が頬張りながら道路を歩いていく。何の違和感もない夏の風物詩とでもいえようか。

後日、午後11時半この前を通る機会があった。家の前の長いすには、ジェラートを頬張る大勢の人がいた。当地の時間感覚といい、それに慣れるにはしばらくは時間がかかりそうである。

ボローニャ一番のジェラート屋
ボローニャ一番のジェラート屋

〈額縁に納まる川の景色〉

風物詩といえば、むしろこちらの方かも知れない。都市建設にあたり、河川と無縁であったわけがない。このボローニャも、市を取り囲むように河川があり、西側には大きく迂回してレノ川が流れている。そしてチェントロ内にも、これらの支流を取り込んでいる。

しかし石造りの、しかも建物と建物の間を隙間なく建設し、時には河川にまで、覆いのふたをのせてしまえば、一見して河川の存在は分からなくなってしまう。壁に穴をあけ、額縁に見せかけ、そこに見える河川を借景に、一幅の絵を描いたようにしたらどうなるであろうか。多少でも涼しげな夏の風物詩ではなかろうか。

額縁に納まる川の景色
額縁に納まる川の景色

〈壮観な金曜市・土曜市〉

チェントロ内には、日本では馴染みのコンビニはない。スーパーマーケットも僅かに数えるほどしかない。ところで、ボローニャ駅から遠くないところに「8月8日広場」がある。

タテヨコ各100メートルはあろうか。高等学校でいえば、グランドの広さである。そこに毎週金曜日、土曜日になると、必ず市が立つ。日曜市ならぬ金曜市・土曜市である。

主な商品は衣料品である。衣服といっても圧倒的に女性の下着が多い。その他台所用品、靴、化粧品などであり、さらには装飾品の類である。2日間とも暑い盛りでも絶えることなく、ごった返している。生活必需品を求めるボローニャ市民にとって、季節折々に欠かせない市場になっているのであろう。

壮観な金曜市・土曜市
壮観な金曜市・土曜市

〈なぜか、帽子屋は見当たらない〉

私は、イタリアは暑いことを承知で、ジョギング時などに利用していた野球帽を持ってきていた。ところが、当地滞在10日ほどたった頃、何かの拍子に帽子を紛失してしまった。この暑さには適わないと、帽子の工面に入った。

しかしチェントロの通りはいうまでもなく、金曜市・土曜市も隈なく探してみた。帽子屋そのものが圧倒的に少ないのである。わずかに帽子らしきものをおいていても、なかなか私を納得させるものがない。贅沢をいっているわけでない。

実は通りがかりの市民・観光客は、ほとんど帽子を被っていない。たまには旅行者と思われる方が、私の被っていたのと同じ野球帽を使っている。考えてみれば、みな太陽への憧れが強い。

日本では「陽(ひ)が体に入る」「肌が焼け、しみが後に残る」といって敬遠しているのとでは、大違いである。結局何日かたっても、自分の帽子は手に入っていない。しばらくは日差しの強いもとでの、ジョギングは控えることにするしかない。

筆者の近影
筆者の近影

〈すべてのバルコニーに平和の旗を〉

日本では原爆投下の8月6日、9日を中心にして、あらためて平和への関心が高まる時期である。こちらでは、イタリア入国以来、一年を通してあちこちの窓際に「PACE(平和)」の旗を目にする。ちょうど労働組合CGILの玄関先にかかっていたポスターを思い出す。

「すべてのバルコニーに平和の旗を」「街中に平和を訴えよう」という呼びかけに応えて、掲げられているものである。いつから開始したのか、いまは定かではない。街のあちこちにこの旗が掲げられている。その多さもただ事ではないと思った。

平和への取組みポスター
平和への取組みポスター


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