カドさんの“ところで”意見
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第38回 日本の運命を考えるにあたって
 ▼2005年の最大の事件は、9月総選挙の結果でした。現政権は、“郵政民営化を国民に問う”として強引に解散総選挙に持ち込み、議会制に風穴を開け、メデアを動員して圧倒的な議席数を騙し取りました。比例代表制のスウェーデンなどでは得票数と議席数が対応しているのに対して、日本の場合は、小選挙区制を「打ちで小槌打ち」に、半数割れの得票数で75%の議席数を得ることができました。民主主義の「偽装表示」といわざるを得ません。
 
 ▼このときのキィーワードが「民意」と「刺客」でした。守旧派の選挙区にマスコミ受けの「刺客」(テロリスト)を放ち、偽装表示によってせしめた熱風で参議院をあぶりだす。「民意」は得票数ではなく、小選挙区制下で作り出された議席数にほかなりません。高学歴社会、超情報化社会という名の暗黒社会(真昼の暗黒)の到来を危惧せざるを得ません。デジタル化による「人間改造」(飯島秘書官)、“主権者から観客へ”が目標です(小泉劇場)。
 
 ▼ところで、この「改造」劇にはもっと大がかりなスケールのシナリオがあるのです。最近一部で話題になり始めた米国発「対日改革要望書」がその原作です(文春新書『拒否できない日本』)。ワシントン「作」,小泉「演」がこの劇場の「出し物」です。郵貯民営化はもちろん、今話題の建築基準法改定をはじめ金融ビッグバン、大店法、会社法、司法制度の「改造」、今後の医療制度「改革」など国民負担の数々が既定の路線として進行中です。
 
 ▼日米関係の実体をさらに国際金融・通貨の面から迫り「円のドル化」の警鐘を鳴らし続けた『マネー敗走』(同)の著者と先の著者の対談形式の本が年末に刊行されました(吉川・関岡『国富消尽』PHP)。日本の学界やマスメデアがこれまで報じなかった日米関係の「本流」がチェックしてあります。“ブッシュこそわが命”の首相をいただく日本国民としては、自らの運命を取り戻そうとするに際し、一考に価する素材を提供しています。

 筆者紹介
門脇久夫
経済学者。以前から、その鋭い問題提起力が注目を集めてきた。会社勤務、経済雑誌編集者、民間研究所研究員を経て、現在いくつかの大学で非常勤講師を務める。「ところで」と、大勢に流されることのない問題提起と分析が魅力。
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