ひゅうまん京都

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養護学校
*養護学校(7月号)

なんで、養護学校からクックチルなの? 中野宏之(京都市教職員組合書記次長)

 7月5日(土)の午後、京都アスニーで、養護学校の保護者、教職員、給食関係者、医療関係者、市民など百六十人が参加して、京都市内養護学校へのクックチル給食(外部の工場で0℃〜3℃に急速冷蔵し、学校で再加熱する)の導入に反対する学習・交流集会が開催されました。 集会

養護学校には不向き

 特別報告を行った堺市の老松診療所管理栄養士の染原剛さんは、日常的に小児外来で子どもたちとかかわっている体験やO‐157食中毒の際、小学校のPTAの役員であった経験などをふまえ、子どもにとっての「食」の重要性を明らかにしました。
 また、「クックチル方式」は、@開発途上の方式であること、Aそれにかかわる労働者の最高の技術とよい食材によって生きるシステムであり、経費節減を目的に実施すると粗悪なものになること、Bその日の体調の変化、それぞれの障害の特徴など、もっとも細かい対応が必要な養護学校の給食には向かないことなどと指摘しました。


「食」と子どもの発達

 続いて、滋賀県草津養護学校で長年重度心身障害児とかかわってきた足立浩子さんは、生まれてからずっとチューブでしか栄養を補給していなかった子どもと「食」の関係を報告しました。
 口から食べ、味わうことによって表情が豊かになっていく子どもの発達のようすを通して、「食」の重要性を語り、さらに自校方式だから作り手と指導する教員が力を合わせて、その子によいものを提供できる学校給食のすぐれた点を報告しました。


秘密主義の導入方法

 続いて集会では、向日市の保護者、養護学校の保護者、医療関係者、実際に市内の養護学校で給食にかかわってきた栄養士、教員、大阪の養護学校の教員、さらには京都市内と宇治の給食調理員、京都市会議員などが発言しました。
 その中で明らかになったことの第1は、京都市教育委員会の導入のやり方の異常さです。
 再編(04年4月に現在の障害種別3校を「総合制・地域性」の養護学校4校に)後の給食について検討してきた養護学校校長会が主宰する研究会(養護学校の校長、栄養士、給食主任などで構成)では、昨年12月まで、自校方式の給食について精力的に検討してきました。
 この検討の中では、1度もクックチル方式の名前すら出されていません。導入を決めるにあたって、現場の給食関係者や保護者、給食指導に携わっている教員の声をまったく聞いていません。
 何度も市教委に足を運んで、納得できる説明を求める保護者に対しても、検討過程、栄養価すら明らかにしません。


なぜ、養護学校からか

 第2は、最も社会的・行政的にケアが必要な重度心身障害児の給食をリストラ・合理化の対象にする異常さです。 残念ながら、全国的にも学校給食の民営化はすすんでいますが、さすがに養護学校から始めている自治体は例がありません。また、調理現場との連携が不可欠な養護学校で自校方式を放棄しているところも聞きません。 それでは、京都市政には、養護学校の給食を充実させるための予算がないのでしょうか。同じく来年の4月に開校される京都市初の中高一貫校(西京高校と附属中学校)は、基本的に用地買収は必要のない改築にもかかわらず、約百億円の予算が投入されています。 一方で肢体不自由の子どもも通う新設養護学校は五階建てですが、ここにはスロープさえ設置されていません。
 これは、「京都市行政の差別性」ではないでしょうか。


オムロンと学校給食

 第3はオムロンと京都市の不可解な関係です。
 京都市教委は業者の選定はこれからと言いながら、試食・工場見学の先はすべてオムロンの子会社「オムロンデリカクリエイツ」になっています(この会社は、数年前から実施されている中学校の弁当給食の搬入業者の一社でもあります。市教委は中学校の弁当給食を「好評」と発表していますが、子どもの評判は芳しくなく、年々注文数が減少しています)。
 さらに、工場見学に参加した保護者からは、「市教委が最新の技術と言っていたから期待して見に行ったが、その実態はどこにでもあるプレハブの給食施設で、正直言ってそのみすぼらしさに驚いた」との感想が寄せられています。
 さらに、自社の会社のホームページで、「クックチル方式」をまだまだ課題があるとしながら、内臓の発達が十分でなかったり、1時間以上も食事に時間がかかったり、味や食感へのこだわりが強い障害児への給食提供をすすめようとする企業の安易な姿勢にも、疑問をもたざるをえません。


問われていること

 今回の問題は、一義的には障害のある子どもの問題です。
 しかし、京都を代表する大企業が、どのような姿勢で顧客に向き合うのかも鋭く問われているのではないでしょうか。
 さらに、なによりも、行政のあり方が問われています。どういう視点で、どこに目を向けて地方自治体が仕事をするのかを問いなおすことが必要です。


5階建て養護学校に異議あり!井上吉郎(本紙編集部)

京都市上京区の元成逸小学校跡地で、新設の市立養護学校の建設が進められています。今年度中の完成予定で、完成の暁には、既設の3養護学校(呉竹、東、西)とあわせて、市立養護学校は、「総合制・地域制」に再編されることになっています。

養護学校建設現場を北から見る 養護学校建設現場を東から見る
養護学校建設現場を北から見る 養護学校建設現場を東から見る

「全国のモデル」?

 このことについて桝本市長は、02年2月5日の定例記者会見で、次のように説明しています。「養護学校の新設・再編についてでございます。ノーマライゼーション理念の進展はもとより、障害の重度・重複化などの養護育成教育を巡る状況に対応するため、養護学校を障害種別を超えた総合制に再編いたします。あわせて,家庭や地域とのつながりを一層強化するとともに、通学時間の短縮を図るため、4つの通学区域からなる地域制を導入いたします。そのため、養護学校を1校新設しますとともに、現在障害種別ごとに設置しております3校の整備に取り組み、平成16年4月の開校・再編を目指します。「総合制・地域制」は全国初の取組で,文部科学省からも注目いただいており、全国のモデルになるものと確信いたしております〈ママ〉」
 非常識な長時間バス通学の改善を求める声を背景にして、「総合制・地域制」が登場してきましたが、この「再編」が、新たな困難を生み出しています。


なんで5階建てなの?

 その最大の問題は、新設校が5階建てという事実です。A棟(地下1階、地上5階)、B棟(地下1階、地上5階)、C棟(地上4階)の3棟ありますが、1階は給食室・管理諸室(A棟)、体育館(B棟)、高齢者施設(C棟)となっており、教室はありません。 教室は2階から5階に配置されていますが、スロープは設置されません。車いすを利用する肢体不自由の児童・生徒はエレベーターが必要ですが、問題は地震などの災害時です。災害時にはエレベーターは止ります。避難しようがありません。
 5階建てといった、非常識極まりない高層養護学校をなぜ作る必要があるのか。こんなことが「全国のモデル」になれば、この国の障害者施策はお先真っ暗になります。このような、障害児の命をないがしろにする、差別的教育行政は、根本的に改めなければなりません。


併設施設にも大問題

 ところが、問題はそれにとどまりません。C棟1階に「デイサービスセンター」と「在宅介護支援センター」が併設されますが、C棟は北側建物ですから、南からの陽が入りません。それどころか、A棟とB、C棟を結んで2階部分に「西陣小路」と名付けられた人工地盤(屋根)が作られますので、デイサービスセンターには自然光さえ差し込まない恐れがあります。また、浴室は建物の東北角に作られますが、そこは養護学校バスの送迎入り口です。人工地盤でふさがれた空間、バスの排気ガスが充満する空間、そこに面して浴室が作られるわけです。

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 「クックチル方式給食」の4養護学校への導入、5階建て養護学校の建設に見られる京都市政は、ノーマライゼーションとはまったく無縁の、差別的市政といわねばなりません。

 
 


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