ひゅうまん京都

WEB版 『ひゅうまん京都』

 

 
 
無年金障害者問題
(05年7月号)

無年金裁判―京都判決を読み解き、控訴審に備える

 7月2日(土)午後6時から、ハートピア京都を会場に、「障害者福祉を否定する京都地裁判決を読み解き、控訴審への決意を新たにするつどい」が開かれました。
 これは学生無年金障害者訴訟の提訴4周年を記念し、5月18日の京都地裁判決の内容を改めて深め、秋にも予定されている控訴審に向けて決意を固めあおうと計画されたもので、原告・家族、弁護団、新聞記事を見て参加した市民・学生など40人近い人が参加しました。「編集部」

編集長 どうだ、ちょっと行くか。

記 者 いいですね。青天井のビアガーデンなんて、絶好ですね。

(と、歌舞練場のビアガーデンに向かった2人)

編集長・記者 乾パーイ!

編集長 ところで、2日のつどいはどうだった?

記 者 地裁段階では初めての原告敗訴判決で、原告や支援者は元気がないのかなと思って顔を出したんですが、なんのなんの、明るくてファイト満々でした。広島の社会保険労務士の畝田谷栄子さんの参加もあって、判決を深く理解できたんじゃないですか。

編集長 地裁判決の解説のようなものが弁護団からあったようだね。

記 者 岡根弁護士が報告していました。
 判決は憲法との適合性を判断する基準として〈憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱,濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄〉と言うんです。

編集長 それは、「堀木訴訟」の最高裁判決(昭和57年)の立場で、〈国民年金法の受給者の範囲等の定めが憲法14条1項に違反するかどうかを判断するに当たっては、憲法25条2項に基づく立法府の裁量権があることを前提として、それによる区別が何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いかどうかの観点から判断されなければならない〉と続くんだったな。

記 者 判決のように広く、あまりにも広く立法府の裁量権を認めてしまっては、生きるか死ぬかといった深刻な問題を抱えている障害者は救われない、そう弁護士は強調していました。

編集長 判決は、憲法14条の「法の下の平等」を基準とした違憲審査をすべき所、完全にさぼっているよね。控訴審では、立法の無制限とも言える裁量権を認める立場の再検討が必要だね。

記 者 次に問題になったのは、国民年金制度の理念、学生の位置づけなんです。判決は、国民年金を老齢年金中心の制度であると位置づけて、稼得活動に従事していない学生を強制加入の対象にしなかったことは、全然問題ではないというんです。

編集長 障害年金付け足し論だな。そして、〈20歳以上の学生である間の傷病のために障害を負う危険性は大きくない〉などと独断に満ちた判決となるんだな。

記 者 そうです。だって、以来30年間で四千人もの障害学生無年金者を生み出しているのにですよ、よくも言えたものだ。何が〈危険性は大きくない〉だ。人生順風満帆な人間だからこんな不遜なことが言えるんだ。

編集長 ま、あんまり興奮するな。折角のビールの泡が飛んでいってしまうよ。

記 者 プハー。任意加入率が1・25%だったことを、判決は、学生の関心が低かったからであって、制度には問題がなかったというんです。これに対して弁護士は、同じく任意加入だった主婦の加入率は60%だったとして、両者には周知徹底などに大きな差異があったのではないかと指摘していました。

編集長 そうだよな。そのころは、任意加入の主婦がいる家庭の子どもが成人学生の多数だった気がするから、母だけ加入して、子どもの加入をケチったは考えにくいな。

記 者 判決は〈憲法25条はすべての障害者に障害に関する年金を支給することまでも求めるものではない〉〈障害福祉年金や障害基礎年金が支給されず、経済的に生活が困難な者が生じたとしても、障害者に対するその他の社会保障制度や生活保護制度の存在を考慮すると、障害福祉年金や障害基礎年金が支給されないことが、直ちに初診時未加入学生障害者の生存権を侵害するものともいえない〉としているんですが、実に傲慢な態度だと思いませんか。

編集長 居直っているというか、国がやることに文句を言うなといった態度が鼻につくな。えらそうで、不愉快だな。

記 者 被告・国側は〈その他の社会保障制度〉にどんなものがあるか、裁判の中では立証もしていないんですよ。弁護士は「証拠に基づく認定とは言えない」と言っていました。

編集長 しかし、なんだな。この判決は障害年金を受け取れない障害者の困難にふれること少なく、「少数者の人権救済機関」(弁護士)たる裁判所の権能を活かして、救済の途を求めようという姿勢に欠けているね。

記 者 許せないですよ。障害者自立支援法が通れば、無年金者も「応益負担」の対象になるんですよ。払うに払えない障害のある人を突き放すようなやり方は、改める必要がありますよ。

編集長 二つの課題が手を結ぶことも大切だな。

(井上吉郎・本紙編集長)

 
 


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